陸上自衛隊の主要装備

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日夜、我が国を防衛してくださっている陸上自衛隊の装備をまとめていきます。(随時更新)
 平成15年6月21日更新 戦車回収車追加 90式画像追加

1.戦闘車両 2.装甲車 3.その他車 4.火砲 5.小火器
6.ミサイル 7.航空機 8.個人装備 9.その他 10.その他

1、戦闘車両(戦車)-90式/74式/61式/戦車回収車


 第1次世界大戦時より、陸軍の主力装備といえば間違いなく「戦車」です。様々な近代兵器・ミサイルが登場する現代においても、陸上戦の王者たるその地位は変わっていません。高い機動力と強力な火砲、そして強固な装甲を備えた戦車は、陸戦の雌雄を決する主役兵器です。

 陸上自衛隊には世界最高レベルの技術を備えた90式戦車と、現在の主力である74式戦車が存在します。また、90式戦車を軽量化した後継機の開発が目下すすめられています。


<90式戦車>〜国産の技術を駆使した世界トップクラスの主力戦車画像:撮影国益研究会『中野』姫路支部 宮川)

 旧式化した74式の後継機として防衛庁が昭和52(1977)年に開発に着手し、平成2(1990)年8月6日に制式化された陸上自衛隊第3世代のMBT(主力戦車)です。防衛庁と三菱重工による日本のハイテク技術が集結されており、強力な主砲と複合装甲、高い機動性を備えています。
 開発状況が似ていたためか、西独のレオパルド2と似た外観をもちますが、レオパルド2と同等以上の性能を一回り小さな車体に納めたのは流石日本の技術といえます。

 主砲はドイツで開発された44口径120mm滑腔砲(当初は純国産の開発を進めていましたが、予定通りに進まなかった為やむなく変更)を装備。砲弾の自動装填装置を採用したことにより、74式戦車より1名少ない3名での運用が可能となっています。更に日本で独自開発した射撃統制装置を搭載したことにより、昼夜に関係なく(例え走行中でも)非常に高い初弾命中率を誇っています。
 砲弾はAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)とHEAT-MP(多目的型対戦車榴弾)を使用。特に徹甲弾の性能は高く距離2,000mで700mmの貫徹力を誇っています。
 砲塔前面と車体前面の装甲には、三菱重工が独自開発したチタンやセラミック等を層状に組み合わせた複合装甲を採用。例え敵の主砲が命中しても貫通することはなく、中の乗員は無傷で活動を続けることができます。
(ただ複合装甲は曲面に形成しづらい為、スマートな外観の74式戦車と比べて非常に直角的な外観となりました)

 エンジンは10気筒液冷ディーゼルエンジンを使用しており、機動性に関しては、短距離では74式にやや分があるものの、始動後のスピードの伸びは良く、制御においても優秀なブレーキ性能を持っています。(制御能力が高すぎる為、急ブレーキ時に乗員が怪我をすることがあるそうです)
 また、油気圧式サスペンションによって車体を上下前後に傾けることが出来、これにより主砲の俯仰角(上下に動かせる角度)を実質的に増大させています。 (74式の特徴であった車体を左右に傾ける機構は廃止)
 それ以外にも、弾薬や燃料系統から乗員を隔離して消火装置を付けたり、側面防護のためのスカートを付けるなど、乗員の生存性を高めるための様々な工夫がなされています。

 90式戦車の最大の問題点はその価格です。大量生産の出来ない日本では、1両約9億円と非常に高コストになるために、これまでの生産台数は約200両、年間の調達台数はわずか20両足らずであり、配備もままならないのが実情です。

≪性能≫ 
正式名称:90式戦車
略称:90TK
愛称:キュウマル
全備重量:50t
寸法:9.80(全長)×3.40(全幅・スカート付)×2.30(全高)
エンジン : 水冷2サイクル10気筒 ディーゼル機関 1,500PS/2,400rpm
最大速度:70km/h
登坂能力:tanθ約60% 
武装:120mm滑腔砲×1 12.7mm重機関銃M2×1 74式車載7.62mm機関銃×1
乗員:3名
製作:三菱重工(砲塔、車体) 日本製鉄所(120ミリ滑腔砲)


<74式戦車>〜第2世代主力戦車の最高峰(画像無)

 昭和36(1961)年に戦後初の国産戦車として61式が配備されたものの、時は既に105〜115mm砲を装備した強力な戦車の時代となっていました。
 このため、登場直後に旧式化してしまった61式戦車の後継として開発されたのが、この第2世代主力戦車の74式です。
 昭和49(1974)年より16年間に873両が生産されており、後継機の90式には劣るものの、予算の関係で90式の配備がままならない現在の自衛隊において、事実上の主力戦車となっています。

 74式戦車は61式や90式と異なり、他国に見られない日本独自の様々な技術を採用していますが、その中でも一番の特徴が、油気圧式サスペンションを使った姿勢制御です。74式は油圧を使ってサスペンションを伸縮させることにより、車高を上下各20cmまで調整し、前後6度、左右9度まで車体を傾けさせることができます。これは世界中のどの主力戦車にも無い特徴であり、起伏に富んだ地形の多い日本ならではの機能といえるでしょう(姿勢制御を利用することにより、起伏に合わせて正確な射撃が行うことができる)。 
 また、砲塔の天井は低く設計されており、優れた避弾経始を持つ砲塔形状を実現しています。
 主砲は2世代主力戦車に対抗できるように当時の水準の105mm砲を搭載、射撃統制装置にはレーザー測距機と弾道コンピュータを連動させた、当時の世界最新のシステムを採用し、格段に命中率を向上させています。

 このように74式は第2世代MBTでは世界で最も優れた傑作戦車でしたが、時代は既に第3世代MBTの開発へと進んでいました。
 74式戦車が採用された年にソビエトは125mm砲を搭載したT-72戦車の生産を開始、その数年後には自動装填装置と自動変速装置などを備えた第3世代MBTが次々と登場、APFSDS弾を装備した新戦車との火力の差は開き、登場からわずか10年で旧式化してしまいました。しかし、その安定した実力は、今なお実戦で通用するレベルを備えています。
 残念ながら平成11(1999)年度からは退役が始まっていますが、独特の流線的形状にはファンも多く、年齢を問わず好まれています。

 なお、平成5(1993)年度には、パッシブ式暗視装置やレーザー検知装置等を装備した「74式戦車改」の試作も行われてましたが、予想外にコストがかかる(1両あたり1億円かかる)ため、試作(4両)だけで見送られています。

≪性能≫
正式名称:74式戦車
略称:74TK
愛称:ナナヨン
全備重量:38t
寸法:9.41(全長)×3.18(全幅・スカート付)×2.25(全高)
エンジン : 空冷2サイクル10気筒 ディーゼル機関 720PS/2,200rpm
最大速度:53km/h
登坂能力: tanθ約60% 
武装:105mmライフル砲×1 12.7mm重機関銃M2×1 74式車載7.62mm機関銃×1
乗員:4名
製作:三菱重工(砲塔、車体) 日本製鉄所(105ミリ滑腔砲)


<61式戦車>〜戦後最初の国産戦車(画像無)<退役。ご苦労様でした>

 61式戦車は、戦後、初めて日本で開発された主力戦車です。
 昭和26(1951)年、サンフランシスコ平和条約が結ばれて、やっと国家として独立することができた頃、日本の警察予備隊(後の自衛隊。昭和25年発足)の装備はアメリカ軍の装備しかありませんでした。
 この状態を憂慮したのか、防衛庁は国産兵器の開発を強引にすすめていきます。昭和35(1960)年の日米安保条約成立後さらにその動きは加速し、ついに昭和36年(1961)年に戦後初の国産主力戦車を完成させることができました。これが61式戦車です。
 61式戦車は、米M47戦車をモデルにそのまま小さくしたような、戦後のアメリカ支配を象徴するような外観でしたが、M47と異なりディーゼルエンジンを採用したり、国内の運用を考え砲の俯仰角を大きく取る等(−10〜+13度)、日本の独自の改良や技術も組み込まれています。
 また主砲の61式90mmライフル砲は、M47の90mmライフル砲のほぼコピーとはいうものの、れっきとした国産の主砲であり、74式・90式ともに主砲は外国製に頼っている点を考えると、当時のこだわりが感じられます。

 しかし、61式が配備された頃には、ソビエトは既に115mm滑腔砲搭載の第2世代MBT<T-62>を完成させていました。旧世代の61式戦車の主砲ではT-62の正面装甲を撃ちぬくことも出来ず、61式は登場した時点で「旧式戦車」扱いとなり、日本は74式の開発へと動くことになります。
 61式戦車は、昭和37(1962)年より昭和50(1975)年までに560両が生産されました。昭和49(1974)年の74式配備後はそちらへ主役を譲り、しばらくは現役として存続することになりましたが、第3世代MBTである90式戦車の配備に伴い退役が進み、ついに一度も戦時を経験すること無く平成12(2000)年末に全車が退役しました。
 怪獣映画ではよく踏まれ役になっていますが、61式戦車は戦後日本の戦車技術が世界に追いついた、歴史的に価値のある戦車です。

≪性能≫ 
正式名称:61式戦車
全備重量:35t
寸法:8.19(全長)×2.95(全幅・スカート付)×2.49(全高)
エンジン : 空冷4ストローク12気筒 ディーゼル機関 570hp/2,100rpm
最大速度:45km/h
武装:61式90mmライフル砲×1 12.7mm重機関銃M2×1 61式車載7.62mm機関銃×1
乗員:4名
製作:三菱重工(砲塔、車体)

 


<戦車回収車>〜90式/78式

 戦車回収車とは、戦線において、動けなくなった戦車を牽引したり、故障したエンジンの交換などを行う車両であり、戦車部隊にはなくてはならない存在です。強力なウインチやブームを使用することで、巨大な戦車を悠々と引き揚げることが出来ます。
 戦車回収車には、78式戦車回収車と90式戦車回収車があります。それぞれ、74式戦車、90式戦車の車体を流用して設計されています。


<90式戦車回収車>

 砲塔を取リ去った90式戦車の車体を流用した戦車回収車です。 
 ウインチの単体牽引能力は30tですが、滑車を利用することで最大牽引力を50tまで上げています。このウインチの力により、50tの重さがある90式を回収することを可能としています。
 頑強な90式の車体を流用した事で自己防御力が78式に比べ飛躍的に向上していることも特徴です。

≪性能≫ 
正式名称:90式戦車回収車
略称:90TKR
愛称:リカバリー
全備重量:50t
寸法:9.20(全長)
最大速度:70km/h
牽引力:50t
吊上げ力:25t
武装:12.7mm重機関銃×1
乗員:4名
製作:三菱重工


<78式戦車回収車>

 砲塔を取リ去った74式戦車の車体をベースに作られています(採用は74式より4年遅れた為、78式の名称となりました)。
 74式戦車と同じく、車体の高さを変えることが出来ます。
 車体中央に配置されたウインチの牽引能力は38tと、普通に使用した場合は90式よりも強力ですが、ワイヤーが60mと短い為、滑車を利用した牽引が困難です。滑車を利用した牽引の場合、実際の距離の倍の長さのワイヤーを必要とするので、78式の場合ワイヤーの長さは実質30mにしかならないからです(90式は滑車利用を前提としているので倍の120mのワイヤーが装備されています)。
 すでに生産は終了していますが、74式戦車を持っている全ての戦車部隊に配備されており、全国各地で目にすることができます。

≪性能≫ 
正式名称:78式戦車回収車
略称:78SR
全備重量:38.9t
寸法:7.95m(全長)
最大速度:53km/h
牽引力:38t
吊上げ力:20t
武装:12.7mm重機関銃×1
乗員:4名
製作:三菱重工



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