映画感想

▲戻る 

16/12/6
『明治天皇と日露大戦争』
沖田東一

バックナンバー

0001『明治天皇と日露大戦争』
国益研究会『中野』事務局長
沖田東一
0002『男たちのYAMATO』
国益研究会『中野』事務局長
沖田東一

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

『明治天皇と日露大戦争』

沖田東一
国益研究会『中野』事務局長
(大阪府在住)

  

 明治の世で近代国家の道を歩んでいる日本が、アジアを狙うロシアと戦い、勝利するまでを扱った巨編映画。明治天皇や日露戦争をテーマにした作品はこの他にも幾つか存在しますが、作品のレベルというか、作品の気合の入り方はこれが一番ではないでしょうか。それぐらい「熱くなる」映画でした。

 話は明治37年。日露開戦へ至る経緯から始まります。日本中がロシアへの開戦気運の中、国民を戦火に巻き込むことへの懸念から、交渉による戦争回避を図る明治天皇の姿勢、そして侵略の態度を崩さぬロシアに対して、やむなく国交断絶・日露開戦を決意するまでのくだりが綿密に描かれています。
 開戦以後は旅順港閉塞から陸軍の奉天・旅順攻略、そしてクライマックスの日本海海戦へと続きます。場面場面で様々なエピソード(「杉野はいずこ」や乃木将軍の息子の戦死、日本海海戦のZ旗、東郷ターンなど)が織り込まれており、時代背景を知る人にとっては一層面白く感じます。また、そうしたエピソードの区切りでは、明治天皇の御製を交えるという構成が取られています。最初は「?」と思いましたが、これにより役柄上、どうしても台詞の少ない明治天皇の人となりを表されているのだと思います。
 戦争について描いていますが単なる戦争賛美ではなく、決断に対する責任、役職に対する責任の重さ、昭和の軍部暴走への批判とも取れる場面もあり、色々と考えさせられる内容です。

 俳優陣の演技も見事です。昭和の俳優は軍人役が似合うと聞いたことがありますが、どの俳優も一兵卒に至るまで、戦前の日本男児を見事に演じています。特に明治天皇役の「アラカン」こと嵐寛寿郎の熱演は『ラスト・サムライ』など比較になりません。このような演技が出来る男優は今はいないでしょう。(最近の邦画やNHKドラマを見ても、そう感じます)
 ちょっと残念に感じたのは特撮場面で、ミニチュアによる撮影(当時では最高ランクだったそうですが)は、ハリウッド映画を見慣れた現代の感覚で見ると、どうしても迫力に欠ける印象を受けました。しかし陸戦、特に旅順攻略のシーン等は何百人も動員した大規模な撮影を行っており、今でも通用する迫力があります(これは逆にCGではまだ難しいかも)。

 時代かかった詩や台詞などは少し抵抗を感じましたが、それを差し引いても、この作品は良作でした。ぜひ他の方にも見ていただきたい作品です。

明治天皇と日露大戦争」については、<国益のリンク集/映画>でも紹介されています。