映画感想

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18/1/3
『男たちのYAMATO』
沖田東一

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0001『明治天皇と日露大戦争』
国益研究会『中野』事務局長
沖田東一
0002『男たちのYAMATO』
国益研究会『中野』事務局長
沖田東一

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『男たちのYAMATO』

沖田東一
国益研究会『中野』事務局長
(大阪府在住)

  
  戦時中に日本で建造された世界最大の戦艦「大和」とその乗員達を、レイテ沖海戦から特攻作戦での大和沈没までの期間で描いた作品です。一部メディアから「戦争賛美映画だ」と言われていましたが、先日観た感想では、母子の別れる場面や特攻作戦前夜の描写など、むしろ反戦的要素の方が強かったと思います。思想的な部分はかなり少なくされており(靖国の言葉さえ出てこない)、それが少し不満に感じられますが、多額の予算を注ぎ込んでいる以上、万人向け作品にせざるを得ないのでしょう。
 新兵が主人公なので、作戦会議のようなシーンは少なく、職務現場の場面が中心です。当時の軍人達の生の感情や戦争の緊迫感などが上手く描かれていたと思います。それらを演じる俳優もなかなかのもの。特に中村獅童(内田守)の白熱の演技は見事の一言でした。
 では良作なのかと言うと、そうでない部分も幾つか見られます。過去現代含めて登場人物がやたらと多く、その全員に焦点を当てようとエピソードを無理矢理盛り込んだ為、逆に個々の人物の掘り下げが浅くなっており、またそういった人物の掘り下げに時間を取られたのか、肝心の大和建造の経緯や時代背景、戦争の経過などの描写がナレーションや当時の映像で省略されてしまっているのは、本末転倒に思われました。「S.W」や「指輪物語」くらいのボリュームならともかく、2時間半で納めるなら、もう少し作品としてのまとまりを考えて欲しかったと思います。
 また、作品内で大和以外の連合艦艇の描写が全く無い事も違和感を感じます。まるで海軍が大和一隻で戦っていたような印象です。「世界最大の戦艦」と作中で語られていましたが、最後の特攻作戦で米軍に袋叩きにされてあっと言う間に沈んでしまうので、大和(=日本海軍)が非常に弱弱しく見えてしまいます。大和という巨大戦艦に対する米軍の執拗な攻め、多数の魚雷を受けながらも懸命に抵抗する大和、次第に傾く艦橋と戦艦内部の修羅場など、次第に大和が追い詰められていく様子がじっくりと描写されていれば、もっと優れた評価を得られたと思います(上映時間の問題は、代わりに現代パート等の不要な箇所を削除すれば良い)。
 ただ、日本兵の戦闘自体は、かなりの臨場感があります。足が吹き飛ばされ、甲板には血飛沫が飛び、周りが機銃で次々と倒されていく中、それでも一歩も退かずに抗戦する兵士達の必死の思いが伝わってきます。 
 「当時、命がけで日本を守ろうとした男達がいた」という製作側のメッセージ。死ぬとわかっていながらも、なぜ絶望的な特攻に臨んだのか。そして生きのびた者は何をすべきなのか。それは映像を通して十分に伝わってきました。
 作品の完成度としては「日露大戦争」「ローレライ」には及びませんが、日本人なら、一度はこの映画を観るべきだと思います。そして知っておくべきです、この想いを。

追記:丁度この文章を書いている際に、映画の観客動員数が100万人を超えたというニュースを見ました。大和ミュージアムなど事前の布石はあったものの、この数字はやはり素晴らしい。