陳水扁総統就任、宣誓と演説全文


陳水扁総統は5月20日、中華民国第11代総統に就任した。午前11時から総統府前広場で開かれた就任式で、総統は次のように宣誓をした。

「私は、全国国民が見守る中、荘厳かつ謙虚な気持ちで、ここに厳かに宣誓をおこなう。憲法および法律の規定を遵守し、公正無私な態度で総統の職務を執行し、族群(エスニックグループ)の和解の促進、全国民の団結、公平正義の追求、国家の主権および尊厳の防衛のため尽力し、国民からの付託に決して反しないことをここに謹んで誓う」

 さらに、「台湾を持続的に存在させるための基礎を固める」との題で演説した。その全文は次の通り:

 各位友邦の元首、外交使節、代表団、各位来賓、親愛なる国民同胞の皆様:

 国内外からお越しになった来賓の皆様、わざわざ中華民国第11代総統・副総統の就任式に共同で参加されたことに対してまず感謝申し上げたい。今日はわれわれがこの場で目撃することは、台湾の民主主義がさらに前に向かって進んでいくことであり、2300万の台湾人民が共同で書き記してきた、困難かつ尊い物語である。

 この喜びに満ちた国家的な祭典において、私個人は人民から荘厳な使命を与えられる。このとき、この一刻、私の心の中と頭の中に思い浮かぶことは、華やかな美辞麗句ではなく、これまでよりもさらに大きな責任、さらに強い謙虚さ、さらに深い思慮についてである。

 台湾は、20世紀の最後の一年に、初めての政権交替という歴史的なハードルを乗り越え、民主主義をさらに発展させるための新たな里程標を築くことができた。新旧両世紀の変わり目とともに、われわれは紆余曲折に満ちた民主主義の道をさらに前に向かって進んだことになる。新たな世紀の初めての出発は、逆境と怒涛に見舞われるなか、旧来のものと新たに生まれたものとが共存し、弱さと強さが交差し、危機と転機が同時に存在してきた。

 台湾の民主主義が、その他の華人社会および新興の民主主義国家に対して示したことは、民主化にともなう教訓のみでなく、良きモデルであった。欧州の民主主義は、さまざまな試練と紆余曲折を経て今日の水準に到達した。それに対して、民主主義の歴史が浅い国は、さまざまな困難を経験してきた台湾を参考にすることができる。台湾がこれまで経験してきたことは、民主主義とは、黙っていれば自然に達成されるユートピアではなく、目的地へと直通する列車でもなく、少しずつ着実に耕し、一歩ずつしっかりと歩んでいくものであることを証明している。

 民主化の第一段階において、台湾は戒厳令解除、国会全面改選から総統直接選挙へと、主権在民の価値観と台湾の主体性を確立してきた。第二段階においては、市民社会の確立と国家共同体の再生に重きをおいている。

 コミュニティーレベルにおける市民意識の形成から、国民投票の実現を含めた、市民の国家公共政策への参加は、市民社会が持つべき権利と義務を確認し、それを強化するものであり、われわれの民主主義をさらに成熟した、理性的な、責任感にあふれたものに充実させるために行うものである。市民社会の確立によって、またみんなが参加し、全体で台湾という土地に対するアイデンティティと共同の記憶を創造することによってのみ、族群、血統、言語、文化の違いによってもたらされる限界を突き破り、新たな国家共同体の復興に向かって進むことができるのである。

 現在の台湾社会には、アイデンティティと族群をめぐる深刻な問題を抱えているのは事実である。われわれは、それをごまかしたり、無視したりしてはならない。まして私個人と民主進歩党を含めた為政者たるもの、そうした問題を率先してわがこととして反省し、真剣に直視し、有効な解決方法を探っていくべきであると考える。

数百年前を省みれば、われわれの祖先は黒水溝(台湾海峡の中の急流部分)を越え、台湾に安心して暮らせる土地を求めて渡ってきたのである。わたってきた年代に違いがあろうと、どこからわたってきたかに違いはあろうと、言語に違いがあろうと、あるいはもともと抱いていた理想に違いがあろうと、最終的にはこの地において根を生やし、この地に住む限りは運命をともにして、共存してきたのである。原住民、新住民、海外在住の台湾人、新たに来た外国人配偶者、あるいは炎天下でも汗水流して働いている出稼ぎの外国人労働者と、(族群の)違いがあろうと、すべての人間がこの地に対して貢献があったことは否定できない事実であり、いずれもが台湾という新たな家を構成する不可欠な一部なのである。

異なる族群の間に、ともすれば歴史的な記憶と民族的な感情から、アイデンティティには差異が生じることもあるかもしれない。しかし、それは互いに受け入れ、理解しあうべきである。かつて権威主義・戒厳令の時代には、族群間の地位の不平等や特定の言語文化への抑圧といった現象があったのは事実である。しかし、われわれが現在認めなければならないことは、極一握りの権力者を除いては、すべての族群が同時に被害者だったということである。2・28事件や白色テロの犠牲者には、本省人も外省人もいたわけであり、その責めは当時の権力者による権力の乱用に帰せるべきであって、特定の族群による圧迫だと考えるべきではない。

 台湾はさまざまな移民からなる社会であって、少数の殖民統治者による国家ではない。いかなる族群も、いわれなき歴史的な重荷を背負ってはならない。今日の台湾において、広東に生まれたとか台東で生まれたとか、母親がベトナムから来たか台南から来たかは関係なく、すべての人が同様の地位と尊厳を持たなければならない。私は考える。台湾にアイデンティティを持つか、中華民国にアイデンティティを持つかは、実は同じ帰属意識なのである。「族群の多元性、国家の一体性」こそが、台湾という土地についての最も美しく完成されたイメージというべきであって、そこには本土か外来かの区別はなく、少数か多数かの区別もない、2300万の台湾人民は、運命を同じくし、栄光と恥辱を共にする集合体なのである。

 今回の総統選挙は、史上空前の激戦であった。選挙結果が明らかになった後、野党の候補者はそれに疑念を表明し、訴訟を提起した。私は現職の総統として、最大限の誠意をもって、司法の独立と公正さを尊重する意思を表明してきた。つまり、結果がいかなるものになろうとも、私個人は絶対にその結果を受け入れるという意思である。私は信じている。法治原則に則り、司法こそが争いを解決する唯一の手段であることを信じるべきであって、たかだか一回の選挙をめぐって、民主主義と法治および司法の独立性に対する人民の信頼感を踏みにじることは、結果的には全国民が損をすることになると。

 本日はこのように雨が降りしきっていることもあって、われわれは激情をおさえ、冷静になって、頭の中をはっきりさせることができる。

 民主主義において定期的に選挙が行われるということは、主権在民の原則を実践する以外にも、人民の意向と社会の価値を具体的に示すという意味が存在している。激烈な競争があることは、政治家を最も直截な形で監視し、教訓を与えるという効果がある。私個人と行政グループを含めて、今回の選挙においては、人民から厳しい試練を受けたものと考える。また、そう考えるからこそ、反省しさらに良くすることができるのである。異なった陣営の間には、理念の違いや政策論争が絶えることはないし、時には国民の多数を巻き込む違いとなることもある。しかし、民主的な選挙というものは、その結果によって勝者が絶対君主となって敗者が賊軍になるということではない。また、結果が国民の間の極限的な対立に転化されるものであってはならない。政党政治における相互監視とチェックアンドバランスの存在は、民主主義の健全な基礎というべきものである。責任ある与党と忠実な野党、それぞれが国民の意思の一部ずつを代弁しているのであって、そうした与野党の存在こそが国家人民全体にとっての政治的な財産となるのである。与党であれ、野党であれ、ともに人民が機会と責任を付与しているのである。

 私個人は考える。今回の選挙が示した究極的な試練とは、過半数のハードルを越えるかどうかではなく、与野党および全国民がいかにして対立の壁を乗り越え、いかにして信頼の溝を越えていくかという点にあると。選挙の得票がきわめて接近しているからといって、社会の矛盾を拡大させたりしてはならない。一時的に対立を解消できないとしても、私個人は引き続き「異なった意見には傾聴し、理解し、法理にもとづいて、団結を目指す」という心積もりで、選挙によって生じた対立を和らげ、与野党間の信頼関係を回復させるべく努力していく。

 台湾を団結させ、両岸関係を安定化させ、社会を安定させ、経済を繁栄させる。これらの課題はすべて現在人民が切実に期待していることであり、政府が将来にわたって施政する際の重点課題でもある。その中のいかなる項目も、一個人、一党だけでは達成することは不可能であり、だからこそ私は野党および世論が共同で支持・勉励してもらうことを願う。ひいては、人民が私にそれらを進めるための力を与えてくれることを願う。

 台湾を信じるには、国家的な競争力を持続させ、一人一人が人間の個性を尊重し、生態環境を維持できる持続的な発展を目指す社会を築いていかなければならない。改革を堅持していくには、政治、司法、教育、金融、財政、メディア、社会の改革を進め、人民からの期待に応えていかなければならない。信じることは力である。堅持することによってのみ理想を実現することができる。現在行っている努力は、われわれの次の世代の生活が、社会正義、経済正義、司法正義、ジェンダーの正義、国際正義にマッチした正義の台湾に住めることを保障するものである。

 現在、台湾が直面している全面的で激烈かつテンポの速い国際競争に対しては、いかにして全国民の力を結集し、さらに一歩進んで政府の効率を引き揚げるかが、国家のさらなう発展を促進するための焦眉の急となっている。そして、現在の台湾は、国情の特殊性と歴史的な要因もあって、政府機能の改革が必要であり、憲政体制がもたらす問題点に直面しているのである。

 憲法は国の基本法であり、政府と人民との契約書である。わが国の憲法はそれが制定された当時の時と場所の違いから、現在の台湾にとって、あるいは将来の必要性に鑑みて、多くの条文が妥当なものでなくなっている。憲政改革の作業は、憲政秩序を再生させるためであって、それはすべての人民が期待するところであり、与野党の共通の認識となっているのである。

 憲政改革の作業は、政府のガバナンスと効率を高め、民主主義と法治の基本を確立し、国家の長期的な安定をもたらすために行うものである。その中でも、緊急かつ明らかな課題は、次のものがある:三権分立か五権憲法維持か、大統領制か内閣制か、総統選挙は相対多数か絶対多数か、国会改革とそれに関連する条項、国民大会の位置づけと存廃問題、省政府組織存廃、投票年齢の引き下げ、兵役制度の調整、基本的人権および弱者権益の保障、国民経済にからむ条文などである。言わば、その作業は膨大なものであり、効果も大きいといえる。

 しかしながら、過去10年間に6度にわたって憲法が改正されたときの過ちを繰り返さないようにしなければならない。憲政改革の作業は、一個人あるいは一政党が主導すべきものでなく、短期的なスパンで考えてはならないのである。将来、われわれは与野党各党、法曹界、学術界および各階層の代表を集めて、憲政改革委員会を組織し、憲政改革の範囲と手続について社会的な最大公約数を引き出し、人民と輿論からの建設的な意見をあおがなければならない。

 2008年、私が総統を退く前に、台湾人民とわれわれの国家に、時代と身の丈とニーズにあった新たな憲法がもたらされることを希望している。これは私の歴史に対する責任であり、人民に対して約束してきたことでもある。同様の責任と約束に立脚して、私は国家主権と領土と統一・独立問題については現在の台湾社会には絶対多数のコンセンサスが形成されていないことを強く知っており、私個人はこれらの議題をここでいう憲政改革の範囲に含めることはふさわしくないと考える。憲政改革の手続は、現行憲法および追加修正条文の規定にもとづき、国会において草案が通過した後、最初にして最後の非常設の国民代表大会を選出する。そうして、憲政改革、国民代表大会廃止、国民投票の憲法条文化などを達成させる。それは民主憲政の長期的な発展を目指し、将来的にレファレンダムによって国会の改憲案を確定させることができるようにす
るためである。

 これまでの4年間、世界の政治経済情勢には目に見える大きな変化があった。台湾は国際敵な新秩序の変動に直面して、自らをレベルアップさせ、足元を固める以外にも、グローバル競争と国際協力の中で、新たな立脚点を捜し求めていかなければならなかった。

 台湾は長年にわたって、米国、日本および多くの世界の友邦との友好関係にもとづいて、共通する利益を追求するだけでなく、自由、民主主義、人権および平和といった「価値にもとづく同盟」関係を築くことを目指してきた。

 台湾の民主主義の発展と台湾海峡の平和と安定は、国際的な関心事となってきた、これまで友邦が示してくれた友誼に対して、私はここで改めてわが国政府と人民を代表して心から感謝の意を表明したい。台湾人民は平和を愛好しているがゆえに、自らの国家の安全に対してほかの誰よりも強い関心をもっている。特に海峡の対岸からの脅威が強まっていることに対して、官民一体となって国防意識を強め、効果的な防衛力を強化し、自衛能力を高めている。と同時に国際社会に対して、台湾海峡の平和とアジア太平洋地域の安定の維持について、引き続き強い関心と協力を示すことを願うものである。

 台湾は引き続き国際社会に対して積極的に貢献したいと願っている。これは2300万人が当然持つべき権利であり、地球市民としての義務でもある。国際社会が反テロや人道支援に立ち上がった際にも、台湾は欠席しないではいられない。これまでの数年間だけでも、われわれは民主太平洋聯盟、民主基金会を設立し、NGOの国際組織に参加するなど、地球村のその他の一員とともに、自由と民主主義と人権といった普遍的な価値の擁護と分担にあたってきた。

 また、台湾は世界で15番目に大きな規模の貿易国家である。国際競争力に関する各種評価ランキングでも絶えず上位を占めている。そして、12年間にわたる努力の末、台湾はWTOの144番目の会員国となることができたが、その間の苦労についてはここで言及するまでもない。そして今は、われわれは、WHOに加入できるべく懸命な努力を続けている。昨年SARSが蔓延した際にも、それを教訓として、医療・衛生・防疫には国境や国家は関係ないとの立場と基本的人権という全人類的な価値観にもとづいて、台湾は公平な待遇を受けるべきことを訴えた。

 ここで私はみなさんに訴えたい。今後2年内にWHOに加入できるべく、われわれはさらに一致団結し、努力を続けていかなければならない。

 最近、欧州連合は新たに10か国の加盟を祝った。EUは数十年にわたる努力の末、各国と人民が自由意志で選択した結果、欧州人民の共通の利益をまとめるという貴重な経験を獲得したのである。それはまた、新世紀の世界情勢に大きな影響と衝撃を与えるものとなっている。地域統合は、現在だけでなく、未来の趨勢である。こうした地域統合はグローバル化の進展もあいまって、人類社会がこれまでもってきた国家主権原理ないしは国境の壁に構造的な変化をもたらしている。世界の大同団結は、もはや夢物語ではなくなりつつある。

 海峡両岸の新世紀のリーダーは、両岸人民の最大の福祉を創造するためにも、こうした世界の新たな趨勢を見通したうえで、まったく新しい発想と枠組みで、両岸の将来について直視し、かつ処理していかなければならないと考える。

 両岸人民は血縁、文化、歴史的背景を共有しており、過去1世紀にわたって強権による蹂躙と独裁支配をともに経験してきた。現在では、両岸人民は自らが立ち上がって、自らの主人になるという強い意志を持っており、この点では双方の相互理解は十分に可能であると考える。

 われわれは、海峡の対岸が歴史的かつ民族的な感情にもとづいて、「一つの中国原則」なるものを放棄しがたいことは理解できる。しかし、北京当局もまた、台湾人民が民主主義を必要とし、平和を愛好し、共存を求め、発展を希求するという点で堅い信念を持っていることを十分に理解する必要がある。もし対岸が2300万人民の単純かつ善良なる願いを理解せず、引き続き台湾に対して武力による威嚇を進めたり政治的孤立化をはかったりして、台湾を国際社会から排除させたりするのであれば、台湾の民心は対岸からますます遠のいていくしかないのである。

 中華民国は台湾・澎湖・金門・馬祖に存在している。台湾は国際社会に存在しているという事実は、何人もいかなる理由であろうとも否定できない事実である。またこれこそが、台湾人民の集体的な意思のありかでもある。これまで半世紀にわたって2300万人民が築いてきた台湾経験は、中華民国が存在しているというプラスの意味を示しているだけでなく、華人社会および両岸人民の共通の資産であるというべきである。

 歴史的な原因によって、両岸は、異なった政治制度と生活様式を発展させている。しかし、もしも両岸がそれぞれ発展させてきた「異なる点」と「同じ点」について肯定的な姿勢で観察する意思を持つのであれば、両岸の協力互恵の関係を築いていく方向でそれらをプラスに活用することができるはずである。台湾は完全に自由で民主的な社会である。いかなる個人や政党であれ、人民をおしのけて最終的な選択をすることはできない。もし両岸の間で、善意にもとづいて、「平和的発展、自由な選択」が可能な環境をともに築いていくのでれば、将来の中華民国と中華人民共和国、あるいはは台湾と中国の間には、いかなる形式の関係もありうるのであり、2300万の台湾人民が同意するのであれば、われわれはあらゆる可能性も排除しない。

 過去十数年にわたる両岸人民の相互交流関係は、密接な関係へと発展している。両岸関係にとって、重要な価値と意義を持つまでになっている。将来的にもわれわれは既存の関係にたって、両岸のニュース、通信、教育、文化、経済貿易交流などに関連する措置をさらに開放、拡大させ、両岸が対話とコミュニケーションのチャネルを回復することを希望する。そうしてこそ、双方の距離を縮め、相互信頼の基礎を築くことができるからである。

21世紀の最初の20年は、台湾はあらゆる面での質を向上させていけるかどうかの鍵となる重要な転換期だと考える。それはまた中国大陸が民主化と自由化に向かうためのチャンスでもある。双方の政府は、こうした機会をとらえるべく全面的に努力すべきである。またグローバル競争の趨勢に注意を注ぎ、政治的な対立で消耗することがないようにしなければならない。われわれは、中共の指導部が近年来安定的な発展の必要性、および13億の大陸人民の福祉を強調するようになっていること、「平和的な台頭」を国際関係の基調として選択していることに注目したい。われわれは、北京当局が台湾海峡の平和的な現状の維持こそが、両岸それぞれの発展およびアジア太平洋地域の安定によって重要であることを、理解することができると信じている。

私はまたこう信じている。両岸が建設と発展に力を注ぎ、動態的な平和安定の相互関係からなる枠組みを話し合いで築きあげ、台湾海峡の現状が一方的に変更されないようにし、三通を含めた文化経済貿易の往来を進めることこそが、両岸人民の福祉と国際社会の希望に合致するものであると。

 私は中華民国の総統として、台湾人民からの付託を受け、国家の主権と安全と尊厳を徹底的に防衛し、国家の持続的な発展と台湾海峡の平和と安定および全国民の意思とコンセンサスの結集に尽力し、両岸関係の将来を適切に処理していかなければならないと考える。そして、本日、私はここで次のことを改めて強調したい。つまり、2000年5月20日の就任演説の際に掲げた原則と約束については、これまで4年間は変えたことがなかったし、これからの4年間も変えることはないということである。こうした基礎にたって、私はさらに与野党および社会各界が共に参加する形で、「両岸平和発展委員会」を設立すること、さらに官民の知恵とコンセンサスを結集して「両岸平和発展綱領」を制定し、両岸の平和と安定、持続的発展の新たな関係を構築することを目指す。

 来賓および親愛なる同胞の皆様:世界地図を広げてみれば、台湾・澎湖・近門・馬祖は太平洋の端に浮かぶ小さないくつかの島に過ぎないように見える。しかし、もっと詳しく観察すれば、これらの島の上には、美しい山河があり、多様な族群があり、多様な生態が存在し、さらに2300万人民がこれまで数世紀にわたって書き記してきた政治・経済・文化の物語を見ることができる。それはまるで内容豊富な百科事典を見ているようでもある。また、海洋国家としての寛容さ、世界的に開かれた島として、この土地に住む人民の視野と心は、地平線とともに無限の広がりを持っている。

 台湾が織り成す物語が人を感動させるのは、それは自然に優れた性質をもっているからではない。そこには、幾多の挫折と苦難と試練を経て、さまざまな色と輝きをもつ光を放っているからである。これこそが「台湾精神」であり、それこそがわれわれが祖先から一人一人に受け継がれてきたものなのである。

 今日、歴史のたいまつは、再び私の手に渡された。それはまた一人一人の国民同胞の手の中に預けられたのである。これからの4年間、私は誠実を語り、慈悲の心を持ち、大公無私と中庸の精神で国を治めたいと願っている。そして、国民同胞の皆様には、私を支持し、鞭撻してくださることを希望している。

 私は平凡な一人の人間に過ぎない。しかし、私は信じている。偉大な総統がいなくても、偉大な人民さえいれば、偉大な国を築くことができる。人民の力を引き出し、民主主義、改革、人間性、平和を持続させることのできる国家を発展させ、その基礎を固め、台湾中華民国を、団結と和解、公正と正義、豊かさとバランス、活力に向けて導いていくこと、これこそが歴史が私に与えた責任であり、人民から与えられた使命であると。

 今年の2月28日は、100万人を越える人達が、フォルモサ(美麗島)のこの土地のうえで、族群、年齢、性別の別なく、共に手に手を取り合い、500キロにも及ぶ民主主義の長い城を築き、最も美しい台湾の地図を描き上げた。台湾は立ち上がっただけでなく、勇敢に歩きだした。世界地図のうえで持続的に発展し、揺るがない存在を築き上げたのである。

 親愛なる国民同胞のみなさん。われわれは共にこの土地に対する感謝の気持ちを持ち、人民に敬礼しようではないか!われわれは台湾のために団結し、台湾を守り、手に手をとって前に進み、この21世紀にも新たに人を感動させしめる台湾の物語を再び書き記していこうではないか!

 最後に、中華民国の国運の隆盛を祈念し、同胞と友人、来賓の皆様方の健康を祈念しつつ演説を締めくくりたいと思う。ありがとう、みなさん!

二〇〇四年五月二十日

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