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テレビ討論 首相が練った「責任転嫁」戦術、あえなく返り討ち

 「攻撃は最大の防御なり」と踏んだのか。参院選公示後初の各党党首のテレビ討論で、菅直人首相(民主党代表)は野党顔負けの質問攻撃を仕掛けた。「逃げ菅」と揶揄(やゆ)されただけに、攻めの姿勢を示したかったようだが、あっさりと返り討ちにあう場面も…。首相ならば、野党の追及を正面から受け止め反論する。なぜそんな「横綱相撲」をとらないのか。それともとれないのか。(船津寛)
 「私はまったくぶれてもいませんし、後退もしていない!」
 首相はフジテレビ「新報道2001」の冒頭で、誰に指摘されたわけでもないのに、わざわざこう断って議論に入った。消費税をめぐる自らの発言を「迷走」と指摘されたことを相当気にしているらしい。
 「逆に質問したいのは」「私も聞きたいのは」−。首相は弱気の虫を隠すかのように野党党首に次々と論争を仕掛けた。野党時代に培った自分のスタイルを貫くことが一番だと判断したようだ。
 2日夜、首相は党本部で選対幹部との作戦会議でこう打ち明けた。
 「860兆円の借金を一体誰が作ったのか。そういうことをきっちり言おうと思ってね…」
 首相が練りに練った基本戦術は「責任転嫁」だった。消費税増税の背景となる財政悪化は「自公政権のツケ」。政権交代後のもたつきは「自民党ができなかったことを9カ月で全部やるのは難しい」との論理で正当化した。マスコミ批判も忘れてはならない。
 首相はこの夜、参院候補に送った檄(げき)文で「野党はこぞって民主党に批判を浴びせるが、まともな対案を出していない」と批判し、「私も死にもの狂いで戦います」と結んだ。文面に「消費税」の文字はなく、参院選の争点は「民主党とともに安定した責任ある政治をつくるか、野党を勝たせて混迷の政治を選ぶか」にすり替えた。
 テレビ討論での首相の戦術は裏目に出た。「自公政権で債務残高が増えたことへの反省があるのか」と山口那津男公明党代表に矛先を向けると「菅さんも自社さ政権で国債発行を増やしたじゃないか」と反撃された。谷垣禎一自民党総裁も「マニフェストで16兆円の財源を見つけるはずだったのではないか。できなければ消費税はばらまきの尻ぬぐいになる」と嘲笑した。
 みんなの党の渡辺喜美代表に「なぜ政権にいた時に公務員制度改革を実行できなかったのか」と皮肉ると、「官僚の天下り根絶法案に反対したのは民主党じゃないか。反対ならば廃止すればいい!」と強烈なカウンターパンチを食らった。連立与党の亀井静香国民新党代表にも「消費税10%アップを共通の具に、混ぜご飯を作るのはよくない」と皮肉られた。
 よほど悔しかったのか、首相はNHKの党首討論では冒頭で司会者に「こちらからも質問させていただくようお願いします」と要望した。4日午後に名古屋市内で行った街頭演説ではこう力を込めた。
 「渡辺喜美さんは民主党がいつの間にか官僚に取り込まれたと言ってますが、違うんですよ。私が財務省を洗脳しているんだ。ぜひ渡辺さんの口車に乗らないでください!」

(平成22年7月5日 産経新聞)

 
 
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