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日本の農業ダメになる 自・民に失望の声

 政権選択が焦点とされる衆院選で、政権を争う自民党と民主党の二大政党がまとめたマニフェスト(政権公約)に盛り込まれた農業政策に対し、大阪の「米どころ」、大阪府能勢町と豊能町の農家が揺れている。両党ともに“ばらまき”を競っているのが実情で、後継者不足に悩む都市近郊の零細農家から失望の声が上がっている。

 「どちらの政策でも、農業をつぶしてしまう」。能勢町の専業農家、加堂芳次さん(62)はこう憤る。十数年前の米価は60キロあたり2万4千円弱だったが、最近は6千〜7千円下落。採算がとれず、年金で不足分を補っている。

 減反の量以上にコメ消費量が減少しているうえ、平成6年から始まったミニマムアクセス(MA)米の輸入が米価下落に拍車をかけた。「食糧管理法の撤廃後、国は何の手だても講じてこなかった。仮に日米FTA(自由貿易協定)を締結したら、日本の農業の8割はダメになる」と加堂さんは表情を曇らせる。

 また、豊能町の兼業農家の男性(58)は、「戸別所得補償をするにしても、MA米の廃止が前提だ」と注文を付ける。自民党は補助金を用意して農家の大規模化を促し、収益性の向上を図るというが、この男性は「山間部では田畑が獣に荒らされて“自然減反”が進んでいる。現場を知らない人らが施策を決めている典型例」と手厳しい。

 ただ、両町は選挙区に入る大阪9区の中で、大票田の茨木市などの陰に隠れ、農業政策は大きな争点になっていない。自民党陣営は「『地産地消』はかねて訴えている」と強調。民主党陣営は「豊能、能勢のようなケースは全国あちこちにあるのではないか」と、農業問題の難しさを認める。

 豊能、能勢両町は京都や大阪の都市部まで1時間ほどの位置にあり、農業をやるには「中途半端な立地」(大阪府議)で、後継者不足にも悩んでいる。しかし、両党の政策は、生産量を国が管理し農家の所得を補助金で支えるという基本枠は変わらない。こうした姿勢に加堂さんは「後継者のためにも、農業を中長期的に魅力ある産業にしなければならない」と苦言を呈した。

(平成21年8月22日 産経)

 
 
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