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小泉改革の「負の遺産」にも審判

 政権選択をかけて18日に公示された衆院選は、小泉構造改革に代わる新たな経済の座標軸を問い直す大きな機会となる。世論の圧倒的な支持で自民党が圧勝した4年前の郵政選挙から4年。その後の安倍、福田、麻生の3政権では、格差問題など小泉改革の“負の遺産”が絶えず問題視されてきたが、これまで国民による審判の場は与えられなかった。その決着のときが、ようやく訪れようとしている。

 「一連の規制緩和などで伸びた産業もあるが、地域間格差やワーキングプアという国民が心配する問題に配慮が足りなかった。率直にゆがみを認め、真剣に対応する」

 麻生太郎首相は公示後の首第一声でこう語り、聴衆にわびた。それは、小泉純一郎元首相の改革路線をはっきりと軌道修正しない限り、自民党に対する逆風を乗り切れないという危機意識の表れでもあった。

 郵政民営化と並ぶ小泉改革の代表例の一つが労働法制の規制緩和だ。政府は平成16年、労働者派遣法改正し、製造業への派遣を解禁。多様な働き方を認めて労働市場を流動化させることで、企業が経営環境の変化に応じて機動的に人員を投入できるようになったが、これに伴う非正規労働者の増加は、17年の前回衆院選以降、格差問題として批判を浴び続けた。

 特に昨秋のリーマン・ショックによる景気悪化で“派遣切り”が大きな社会問題となり、一気に雇用不安が高まった。野党にとっては格好の攻撃材料で、自民党もようやく“負の遺産”と真正面から対峙(たいじ)せざるを得なくなった形だ。

 実際、今回は与野党ともに「安心」や「安定」を政権公約のキーワードとして並べ立て、格差是正策などを競い合っている。

 小泉元首相の人気に乗って前回衆院選で圧勝した自民党にしても、「行き過ぎた市場原理主義との決別」を政権公約に明記。日雇い派遣の原則禁止や若者の正規雇用化の支援を盛り込んだ。

 一方、民主党は最低賃金の1千円への引き上げのほか、高校授業料の実質無償化や希望者全員が受けられる奨学金制度の創設で、親の貧富の差が次世代に受け継がれる「格差の固定化」を是正すべきだと主張。社民党、共産党も雇用環境の改善を訴えている。

(平成21年8月18日 産経)

 
 
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