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八ッ場ダム、中止公約の民主は現地区での候補見送り

 群馬県長野原町の八ッ場(やんば)ダム事業中止を、民主党が政権公約(マニフェスト)に掲げる。国は秋から本格工事に入る予定で、争点に急浮上。

 ところが、水没予定地のある群馬5区で、民主は候補者の擁立を見送った。地元住民は何とも、やり場のない思いだ。

 群馬5区は、自民党の小渕優子・少子化相(35)、社民党の土屋富久氏(72)ら3人の争いとなる見通し。民主はダムに反対する社民と選挙協力し、候補を立てない。民主は「政権交代すれば中止できるのだから、共闘して過半数を取るほうが大事だ」(石関貴史・前衆院議員)とする。

 小渕氏の選対顧問の高山欣也・長野原町長が今月6日、民主党本部に姿を見せた。鳩山代表にあてた要請書を持参していた。「ダム中止は地元住民の心情を全く無視したもの。地元住民は疲れ切っている」。中止撤回を求める内容だった。しかし、要請書を鳩山代表に直接手渡すことはできず、職員に託した。高山町長は訪問の意図を、「政権交代も想定し、地元首長としての意思表示をしておかなくてはという思いからだ」と語った。「中止方針は変わらないが、地域と相談の上で進める」と説明を受けたといい、「政権が代わった時の対応は、別途考える」と述べ、党本部を後にした。

 ◆睡眠薬手放せぬ住民も◆

 水没予定地の川原湯温泉街で土産物店を営む樋田三恵子さん(80)は「選挙後を考えると眠れなくて、睡眠薬が手放せない。50年以上、嫌な思いをしてきた。暗いトンネルをようやく抜けられそうなのに……」と漏らす。計画が持ち上がってから半世紀の時が流れた。事業費3200億円が既に投じられている。

 閣僚の小渕氏には応援要請が相次ぎ、選挙区内を回る余裕はない。土屋氏は社会保障政策に焦点を当てる。双方の陣営は、地元でダム問題に触れる機会はほとんどない。

 飲食店を営む男性(63)は「民主は候補者を立てれば、白黒はっきりできた」と語る。旅館業の男性(45)は「民主の候補がいないのはおかしい」と釈然としない。食品製造業の男性(57)は「勝ち目がないので(候補を)出せないのは、何となく理解できる」と話した。

 代替地へ6月に引っ越した男性会社員(43)は「ダムを止めると言うが、どうやって止めるのだろう。地元の票は参考にされず、結果だけを受け入れるのか……」とため息をついた。

 注目される争点の現場。住民は空白地帯に置かれたようになっている。

(平成21年8月14日 産経)

 
 
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