チベットの現状

文化・言語  チベットにはもともと独自の言語体系が存在したが、中国による占領と大量の中国人のチベットへの移住により、チベット語より中国語の方が優勢になりつつあります。中国政府はチベットの子供達に中国語による教育を強制し、チベット社会において中国語の利用を優先させることで、チベット文化を抑圧しています。
 また、中国政府にコントロールされているチベットの教育システムではチベット人は不当に差別され、学生は法外な授業料を払わなければなりません。そのためチベットの親は、子供を遠く離れたインドやネパールにあるチベット亡命政府によって運営されている難民学校に送り、勉強させています。そこではチベット語、英語、チベット文化が自由に学べますが、チベット内での公用語が中国語とされているため、チベットに戻った子供達の就職は容易ではなく、これが多くのホームレス、ストリートチルドレンを生み出す原因となっています。
国旗・国歌

■チベット国旗チベット国旗

チベット軍旗のデザインが元となっている。
中央の白い三角形は雪山を、 太陽は、チベットの民への自由と平等・繁栄を、6つの赤い光線は、チベット民族の起源となった6つの氏族を象徴している。 
一対のスノー・ライオンの姿は、チベットの精神的および世俗的な方策が勝利をおさめることを象徴している。 
ライオンが支える3つの宝石は、チベットの民にとって精神的な拠り所となる3つの源(ブッダ・達磨・僧侶)に対する尊敬の念を象徴している。
ライオンが持つ、円形で2つの色が塗られているものは、十善業法と十六浄人法による自律を象徴している。
黄色の縁取りは、仏教がすべての場所で永遠に栄えることを象徴している。 

■ チベット国歌

輪廻・涅槃における平和と幸福への,あらゆる願いの宝蔵にして
願いを意のままに叶えることができる,宝石の如き仏陀の
教えの光明を輝かせよう

そして,仏教と衆生の持宝たる大地を育み,守護する御法神よ
汝の徳の高い偉業の大海が広がり
金剛のように固く,慈悲をもって全てのものをお守りください

百の歓喜を備えた天授の法が,我々の頭上に留まり
四徳の力が増大し
チベットの三区全土が,幸福で円満な時代で満たされ,
政教が盛行しますように

仏陀の教えが十方に広がることによって
世界中の全ての人々が平安を享受できますように

そして,チベットの仏教と衆生の吉兆なる陽光と
十万に広がる吉兆なる光明の輝きが
邪悪な暗闇との戦いに勝利しますように 

(※チベット語の直訳) 
信仰  ダライ・ラマ法王の写真は違法で、発見されると重罪をかせられ、政治犯、またはスパイ、テロリストとして投獄されます。また、チベットの僧侶・尼僧は自分たちの宗教を自由に信仰することができません。彼らの意思に反して公に信仰を放棄することを強制させられる上、彼らの行動は常に監視されています。
人権 現在、チベットでは以下のような事が公然と行われています。
・中国共産主義イデオロギーに反するような意見はどんな表現であっても、逮捕の対象となる。
・ 中国政府は、ダライ・ラマ法王に対する忠誠心、チベット民族主義、およびあらゆる反対意見を組織的に覆い隠している。
・ チベット人は、恣意的な逮捕・拘禁をされている。
・ 現在収監されているチベット人達は法的代理権は与えられず、また中国の訴訟手続きは国際基準を満たさないものである。
・ 国際の拷問等禁止条約に矛盾しているにもかかわらず、中国の刑務所や拘置所では、今でも拷問がはびこっている。
・ チベット人女性は、不妊手術・避妊・中絶手続きを強要する対象にされている。
・ 生計困難、不十分な設備や差別的な方策のため、多くのチベット人の子供達は、適切な健康管理や就学の権利を与えられていない。
・ 政治的理由による投獄率が、その他の中国支配下の他の地域に比べ、はるかに高い。
・ 子供でさえ、言論の自由に対する中国の抑圧から免除されることはない。18歳未満のチベット人の政治犯がおり、子供の僧尼たちは自分達の宗教施設からことごとく放逐されている。中国は近年、チベットは非仏教地区になりつつあると宣言した。
・ 強制収容され、詳細な拘留理由も明らかにされることなく、失踪を余儀なくされるケースが続出している。
・ 70パーセント以上のチベット人は 「チベット自治区」に住んでおり、現在、貧困線(最低限の所得水準)以下の生活をしている。
チベット政治犯  現在500人以上ものチベット人が政治犯として投獄されています。彼等政治犯の多くは、独立を口にしたり中国の占領政策に反対した理由で投獄されています。 また、世界最年少の政治犯であるパンチェン・ラマ(チベット宗教上重要な人物)氏は家族と共に拉致され、彼の居所、健康状態等は公表されていません。
自然  チベットはもともとは自然豊かな土地でした。しかし、中国の占領政策によって、チベットの自然は蹂躙されつづけています。
 世界でも高水準の貯蓄領を誇っていた森林は、中国の「近代化」政策による乱伐で、1959年には2千520万ヘクタールあった森林面積が、1985年には1千357万ヘクタールにまで半分にまで減少してしまいました。この乱伐によって、チベットは土壌浸食とアジアの重要な河川の沈泥の増大を惹き起こしています。メコン川の沈泥、揚子江、インダス河、サルウィン河、黄河などの河床の上昇が、近年アジアで起こった主な河川の大氾濫の原因となっている。これはチベットのみならず、河川の下流域に住む世界の人口の約半数に悪影響を及ぼしています。
野生動物  チベットでは1901年にダライ・ラマ13世によって、チベット国内での野生動物の狩猟禁止令を発令しました。しかし中国は同様の制約は実施せず、逆に絶滅寸前種の「トロフィー・ハンティング」を積極的に奨励しています。チベット高原においては、少なくとも81種の野生生物が絶滅の危機に瀕していると言われています。
 あの有名なジャイアントパンダも、実はチベット固有の動物なのです。
チベット民族浄化  近年の中国政府による道路建設、鉄道建設計画、そして中国人のチベット内への大規模な入植計画によって 、チベット人は自国内で急速に小数民族化しつつあります。現在、チベットでは、チベット人600万人に対し、中国人は750万人で、すでに中国人人口の方が勝っています。そして中国政府による「一つの中国=(チベットの中国化)」計画は現在も進行中です。
 また以前は、中国政府は政策の一貫としてチベット人女性に中絶・不妊手術を強制してきました。今日、このような政策は強制されていませんが、多くの地域で強く求められています。

『国益.com』