平成23年11月29日
11月27日に実施された大阪の府知事選・市長選は、橋下の維新の会の勝利に終わった。マスコミは接戦と予想していたが、開票と同時に勝敗がつくほどの“圧勝”だった。なぜここまでの差がついてしまったのか、拙劣ながら以下に検証した。
マスコミを利用した橋下
まずは、橋下氏が今回の選挙を自分の土俵にもっていった手腕に注目したい。
最初に任期半ばで府知事を辞めたことでマスコミの関心を高め、そして府知事選・市長選のW選挙としたことで、さらに大きくマスコミを注目させた。結果、マスコミは連日選挙の報道を行い、府民の関心は高まった。これが無党派層の投票率のUPに繋がった。
そして「《大阪都構想》を実現させるための出馬」とマスコミを通じて何度も訴えることで、選挙の焦点を大阪都構想に集め、改革に賛成か否か、という二極構図を作り、政治に疎い層にもわかりやすい(投票しやすい)選挙にすることに成功した。
大阪市の現状への閉塞感
もっとも、大阪市の経済が順風満帆だったならば、いくら橋下が色々手段を講じても、政治改革に対する国民の反応は薄かっただろう。
しかし、今の大阪市は財政危機で、借金額は政令指定都市中で最悪である。それに加えて、平均給与800万円の市職員、予算の2割を占める生活保護、同和利権や在日利権など様々な団体との癒着など、数々の既得権益が財政を食い荒らしている。こうしたことに、大阪府民は強い不満を持っていた。橋下の掲げた改革案は、この現状を打破する手段として府民に受け入れられた。今回の投票率60%という数字は、現状の危機を何とかしてほしいという府民の思いであり、橋下は府民の不満の受け皿となることで、大量の支持を得ることができた。
過去のしがらみから抜けられなかった平松
対して平松陣営の方はどうであったかというと、橋下の政策への批判に終始し、独自で具体的な政策を打ち出そうとはしなかった。平松の選挙ポスターを見ても「大阪満足度日本一」「教育満足度日本一」と、抽象的なことしか書かれていない。
本当なら平松は大阪都構想に対し、効果的な対案を出すべきだった。しかし、平松側にはそれが出来ない。なぜなら、それは自分を支持する利権団体の意向に反することだからである。
大阪が構造的に生まれ変わるために必要なことは“過去とのしがらみ”を断ち切ることだが、平松にはそれが出来なかった。これが大きくマイナスになった。
反維新陣営のキャンペーンの空振り
選挙のやり方でも平松側は失敗している。今回の選挙において、平松および支持団体は、徹底的に反橋下のキャンペーンを行った。「橋下=独裁者」のイメージを植え付けて、市民の支持を減らそうとした。しかし、大規模なキャンペーンは逆に府民に選挙への関心を与えることになった(これは、日本映画「プライド」でマスコミの反対報道でかえって興味をひいて映画を見に行く人が増えたのと似ている)。連日の橋下叩きの報道も、それ以上に現体制への不満が強い府民には逆効果だった。
また、既存政党や団体がこぞってスクラムを組んだことも「既成政党が利権のために手を組んだ」というマイナス印象を国民に与えた。共産党と自民党、民主党が同じ車で平松を応援するという節操の無い行動は、党支持者も愛想を尽かした。マスコミの出口調査で、民主・自民支持層から5割、公明支持層から4割、共産支持層からも2割が橋下に投票したという結果が、その証左である。
まとめ:大阪市の現状を否定した橋下、肯定した平松
以上のことから、今回の選挙結果の要因をまとめると、大阪市の現状に対しての両候補の認識と対処の違いが決定的だったと言える。
橋下は「大阪を変えなければ、このままではじり貧だ」と現状への危機感を顕わにしていた。一方、平松陣営は「大阪はよくなっている」と、現状を肯定的に語った。
しかし、大阪府民は現体制に既に見切りをつけており、府民が候補者に期待していたのは、大阪を変えるべきか否かの議論ではなく、大阪をいかにして変えるかの手段であった。現状を最悪として改革を訴えた橋下。既存利権を守るために現状維持を訴えた平松。民意がどちらを支持するかは言うまでもない。今回の橋下の勝利は、決して知名度や話題性だけではなく、現状を打開するための政策をきちんと提示した結果とも見るべきだろう。
とにかく、今回の選挙で府と市の双方を維新の会が勝利したことで、大阪のねじれ問題も解消された。今後の橋下の動きが非常に楽しみである。
文筆:沖田東一