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自殺を煽る報道をやめよ  沖田 東一

平成23年7月7日

 自殺者急増、人気女性タレントの影響? 内閣府参与報告関連

 今年5月に自殺者が急増したのは、女性タレントの自殺の影響だった――。清水康之内閣府参与(NPO自殺対策支援センター・ライフリンク代表)が4日、内閣府の自殺対策会議でそう報告した。
 減少傾向にあった月別自殺者数が5月、前年比19.7%増と急伸したため、当時の担当大臣だった蓮舫氏が東日本大震災との関連を含めて内閣府に分析を指示していた。
 その結果、今年初めからの自殺者数は1日平均82人だったが、人気女性タレントの自殺が報じられた翌日の5月13日から1週間は1日平均124人に増えたことが判明。増加分の半数以上を20〜30代が占め、女性の伸び率が高かった。清水氏は原因として「女性タレントの自殺と関連報道が考えられる。政府としてはメディア各社にガイドラインの策定を呼びかけるべきだ」と指摘した。
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コメント:
 記事では女性タレントの自殺の影響で自殺者が増えたように書かれているが、本当の原因は自殺そのものではなく、自殺に対するマスコミの報道姿勢にある。
 日本のマスコミの自殺に対する報道の過熱ぶりは異常である。特に有名人が自殺した時は特番で自殺した経緯や自殺手段、心情、人間関係などを事細かに報道する。視聴率絶対の考えがこうした報道姿勢を生んでいるのだが、この過剰な自殺報道がさらなる自殺を誘発する事は「ウェルテル効果」として統計的に証明されている。精神的に疲れている人が自殺報道を見て「自分も死んで楽になろう」「自殺すれば日本中が私に同情してくれる」と感じ、それが自殺への引き金となることが多々あるのだ。
 海外では、こうした自殺報道による悪影響を問題視し、WHOが「自殺事例報道のあり方について」のガイドラインを設けている。例えば自殺手段を詳細に報道しない、自殺の悲劇性を強調しない、必要以上に自殺を報じない、といった自主規制をマスコミが行い、同時に自殺より良い解決手段があることをその都度強調することで、視聴者を扇動しないようにする取り決めである。先進国では常識の概念であるが、残念ながら国内マスコミでこれを守っているところは殆どない。過去の練炭自殺についての報道では、道具の入手経路まで事細かにマスコミが報道したせいで、同類の自殺者が後をたたなかった。ある意味、彼らを殺したのはマスコミと言っても良い。
 日本では毎年3万人以上の国民が自殺しているが、その自殺の後押しをしているのは、他ならぬマスコミである。マスコミ自身が報道を自制できないのなら、政府がメディアに抑制を指導すべきだろう。(自殺報道に限定しての指導なら、マスコミも「報道の自由」を盾にしにくいだろう)

文筆:沖田東一