平成23年5月8日
原発全面停止、結論を持ち越し=夏場の電力供給など見極め―中部電力
中部電力は7日の臨時取締役会で、浜岡原発(静岡県御前崎市)について、稼働中の4、5号機も含めて全面停止してほしいとの政府要請を受け入れるべきかどうか議論した。しかし、電力の利用企業や原発立地の地元、株主などに多大な影響を与えることから結論に至らず、持ち越した。
中部電力首脳は7日夜、記者団に対し「(首相の要請を)受けるにしても止めたときの利害、止めないときの利害がいろいろある。大きなお金やお客さまの迷惑の話でもあり、議論しなくてはいけない」と指摘。その上で「首相が言ったからといって、『はい分かりました』という話ではない」と語った。8日以降に改めて取締役会で議論し、夏場の安定供給に本当に問題がないのかどうか慎重に判断する見通しだ。
7日の取締役会は、水野明久社長らが出席して午後1時から約1時間半開催。原発停止分を補う火力発電所の供給能力や石油・天然ガスなどの燃料調達見通しに加え、火力の活用に伴う発電コスト上昇が業績に与える影響、新たな津波対策など広範な議論を行った。
浜岡原発は、1、2号機が廃炉に向けて停止されており、定期点検中の3号機と稼働中の4、5号機を合わせた電力供給能力は360万キロワットに上る。これらを全て停止状態にすると、同社が想定する夏のピーク需要に対する電力供給余力はわずか20万キロワットしかなくなる計算だ。
東京電力・福島第1原発の事故で、今年は冷房需要が高まる夏の電力供給不足が例年以上に懸念されている。こうした状況での浜岡原発の停止要請に対しては、他の電力会社から「意図がよく分からない」(幹部)との声も上がっている。
(5月7日 時事通信)
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コメント:
進め方がやや強引な気もしたが、浜岡原発を停止させるか否かについては、原発停止を要請した菅直人の方が適切な判断をしたと思っている。
浜岡原発の危険性は前々から言われていたことであり、今後30年以内に東海地震の起こる可能性は80%以上で、浜岡原発はその震源地の中心部に位置している。にもかかわらず地震津波への対策は脆弱なのだから、今後の運用に危機感を感じて当然だろう。中部電力は原子力への依存が比較的低く、浜岡原発の発電量も中部電力全体の1割程度でしかない。中部電力は現在供給過剰なので、浜岡原発を停止させても大きな影響は出ない。
ただ気になるのは、原発停止が「命令」ではなく「要請」であったことだ。「要請」だと最終判断を中部電力に委ねているので、原発を停止させて万一問題が出た場合、菅直人が責任を取らない可能性がある。これが中部電力側の反発の理由の一端にもなっている。無責任な「要請」だけではただのパフォーマンスと思われても仕方がない。また、2年間の停止措置というのも、菅直人の在任期限だけという意図が見え透いている。
本当に党として支持率を回復したいなら、廃炉を前提として法制定のうえで命令すべきだ。当然各方面からの圧力が来るだろうが、それを乗り越えて原発停止を貫くだけのリーダーシップを見せてほしい。
文筆:沖田東一