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理想と現実は違う  沖田 東一

平成23年5月5日

「憲法9条は人類の理想」 梅原猛さん、憲法集会で語る

 日本国憲法の施行から64年を迎えた3日、「5・3憲法集会」(憲法9条京都の会主催)が京都市左京区の京都会館で開かれ、市民ら約2400人が参加した。哲学者の梅原猛さん(86)の記念講演や憲法ウオークがあり、戦争放棄をうたう9条の大切さを訴えた。
 梅原さんは講演で自身の戦争体験を語った。学生だった太平洋戦争中、勤労奉仕で名古屋の工場にいたところ、米軍の空襲に遭った。逃げ込むはずだった防空壕(ごう)に爆弾が直撃し、多くの死者が出たという。「なぜ一つしかない命を戦争に捧げなくてはならないのかと深く悩んだ」
 また、東日本大震災による原発事故に触れ、「環境破壊に正面から向き合うため、国家同士が協力する時代。平和を定めた憲法9条には、21世紀以降の人類の理想がある」と語った。
(5月3日 朝日新聞)
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コメント:
 戦争放棄という理想はわかる。誰だって戦争で死にたくない。戦争でつらい少年時代を経験した老人やそれを聞いた人が反戦思想を持つのは自然なことかもしれない。
 しかし現実問題として、今の世界で戦争は起きており、国家の体を維持するには軍事力が不可欠だ。軍事力を持たない国は、チベットのように蹂躙されてしまうだけ。日本の平和も、背後にアメリカの軍事力あればこそである。それでも中国やロシアの領海侵犯はしょっちゅう起きており、海保や自衛隊が領海警備にあたっている。それが日本の現実であり、これを無視して戦争放棄や自衛隊撤廃を叫び「9条があれば戦争は起きない」と言ったところで説得力はない。「M8以上の地震は起きない」と言って対策を取らなかった東電の無責任さと何ら変わりはしない。
 本当に戦争放棄を実現したいなら、逆に憲法から9条を撤廃して交戦権を明記し、どの国からも戦争を仕掛けられない国になるしか方法はない。それを阻もうとする9条の会こそが、日本の平和を脅かす癌である。

文筆:沖田東一