平成23年2月2日
1月に行われたサッカーアジア杯で、日本代表が苦戦を乗り越えて見事優勝した。主力選手が相次ぐ怪我で欠場した中で勝ち取った優勝は賞賛に値するものだ。
日本のサッカーがここまで強くなったのは、選手の団結力と、監督のアルベルト・ザッケローニ氏の功績が大きい。
平成22年8月に、ザッケローニ氏が岡田ジャパンの後任として監督に就任して、まず方針として打ち立てたのは、岡田ジャパンの用いた守備偏重サッカーからの脱皮と、俊敏さを生かした攻撃性の高いチーム作りだった。日本人は他国と比べて戦術を忠実にこなし、体躯は劣るが持久力に勝る。ザッケローニ監督は、日本人選手個々の長所を活用して攻撃の駒とするサッカーを作ることを目指した。中盤の選手を増やす事で数的優位を生み、コートの支配力を上げる、サイドバックを積極的に上げる事で突破力を高める、本田、松井といったMFがポジションチェンジを繰り返し、攻撃の隙を作るなど、守備偏重スタイルから攻撃的なチームへと日本代表を調整していった。こうしたプレイには綿密な連携が必要だが、ザッケローニは日本代表にはその資質があると判断していた。大会前には練習不足が危ぶまれていたが、いざ始まるとこの戦術は日本代表にピタリとはまり、得点力のキーとなった。
一方、彼は選手を自分の枠に押し付けることはしなかった。長谷部のチームリーダ選出や、伊野波のSB起用など、ザッケローニ監督は選手を色々と起用したが、後は選手の自主性に任せていた(これは本田選手もインタビューでたびたび答えている)。また控え選手にも大会経験を積ませるために積極的に試合に登用するなど、選手のフォローにも気を配った。選手の能力を見出し、選手を信頼する事で結束を強める、それがザッケローニ監督の運用法なのだろう。下の記事はその一例である。
「カタールでチンタラ練習していたMF柏木を呼んで注意したことがあったが、一方的に叱責するだけではなく、気持ちを入れ替えて練習に励んだ柏木をサウジ戦のトップ下に起用。ちゃんとフォローしている。“頑張れば試合に出られる”と前向きなムードを植え付けたことも、決勝進出の原動力のひとつとなった」(日刊ゲンダ記事より引用)
ザッケローニ監督は、選手がどんなに失敗しても、「君への信頼は揺るがない」と言って選手を鼓舞したが、こうして選手への信頼を示すことが選手のモチベーションを上げることになり、アジアカップでは交代出場選手の殆どが結果を残すこととなった。
これらの選手と監督、選手同士の団結の強さが、今回の優勝に結び付いたのだろう。今回のアジアカップ優勝を受けて、日本のFIFAサッカー世界ランキングは29位から17位へと12以上もランクが上昇し、アジアで首位となった。本当に素晴らしいチームである。
しかし、こうしたサッカーの快挙とは対照的なのが、民主党政権だ。日本の代表である民主党だが、連日ニュースで流れているのは党内の内紛のニュースばかり。内閣の言動不一致や閣僚の危機対処能力の低さなどが指摘されている様は、実に見苦しいの一言である。
特に監督の立場である首相からして行動がちぐはぐだ。「私が挙党体制を一番望んでいる」と発言したはずが、就任してから行ったのは反対派閥の排除。ザッケローニ監督は全員サッカーを目指して見事優勝を飾ったが、菅首相は自己保身のために全く真逆の行動をとっている。人事は首相の専権事項だが、同じ民主党の議員に対して信頼どころか排除を加える状況で、首相への信頼感が生まれるはずもない。自然、議員同士も疑心暗鬼に走って皆バラバラになってしまう。挙党一致どころか菅執行部を支える前原は首相を馬鹿にして、友党の国民新党さえ首相退陣を迫る始末だ。ザッケローニ監督の人心掌握力とは雲泥の差である。このうえ、衆議院選で実行を断言していたマニュフェストも見直すなど、民主党に投票した国民への裏切り行為までも民主党政権は平気で行っている。こんな反則行為、サッカーなら一発退場だ。
菅首相(=民主党政権)の態度に、国民と議員はレッドカードを出している。ザッケローニ監督のように仲間を信頼することもできない、そんな臆病者のリーダーなど必要ない、一刻も早く退陣すべきである。
文筆:沖田東一