平成23年10月7日
「北方領土 絵本も露領」
文部科学省所管の社団法人「日本図書館協会」(東京)が全国の図書館に推奨する子供向けの絵本「国旗の絵本」(戸田デザイン研究室発行)に、北方領土を「ロシア領」と色分けした地図が掲載されていることが5日、分かった。指摘を受け、発行者側は訂正したが、「問題提起するため、あえてやった」と説明した。先月には文科省が後援する「国際地理オリンピック」の募集ポスターで同様の事例が発覚したばかり。領土問題への認識の薄さがまた明らかになった。
「国旗の絵本」は、世界193ヵ国の国旗を首都名とともにカラーで掲載したもの。巻頭と巻末の世界地図で、日本固有の領土である北方領土がロシア領に色分けされていた。この絵本は昭和62年に初版を発行。同年、図書館の振興を活動目的とする日本図書館協会が「選定図書」に指定した。選定図書は、学識者や教員ら約50人で構成する選定委員会が決定し、全国の図書館が本を購入する際の指標になる。この絵本も全国に行き渡っているとみられる。
9月上旬、同協会に匿名で指摘があり、同協会が戸田デザイン研究所に訂正を求めたところ、同研究室も応じ、11月から発行する第94版では、北方領土を日本の色に訂正したという。
産経新聞の取材に対し、同協会は「目が届かなかった。領土問題への意識が欠落していた」と釈明した。
絵本を企画・編集した同研究室の戸田やすし氏は「日本の領土なのに、日本人が行き来できない不正常な状況を表現するため、あえてロシア領の色にしたが、説明不足だったので訂正した」と説明した。
同研究室によると、絵本は20年以上にわたり、50万部以上発行されてきたが、こうした指摘は今回まで一度もなかったという。
10月6日産経新聞
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(木下コメント)
深刻である。もはやこういった事例が顕在化していないだけで、他にもまだまだあると考えざるをえない。今回の場合は子供が読む絵本だが、何の疑いもなく全てを吸収するこの年代に与える影響は大きい。国の概念が分かり始めるこの世代から、正しい知識を教える必要があるはずだが、今回のような誤りを犯すとは、20年間も関係者は気付かなかったのか、もしくは日本固有の領土だと確信が持てなかったのか。(「あえてロシア領の色にした」というのは詭弁だ、児童に複雑な問題提起する必要はない)
数年前にあった実話だが、北海道を修学旅行中の中学生の団体が、「北方領土返還」の横断幕を掲げデモを行っている団体に遭遇した。するとその時のツアーガイドが何と言ったか…「彼らと目を合わさないで下さい!」こう注意した。大人であれば、デモは警察の許可を得て行う社会行動と理解しているが、中学生がガイドにこう言われれば、「この人たちは怖い人たちだ、関わらないようにしよう」と言う事になる。きちんと教えられていればどうと言う事はないのだが、前述の絵本等、間違った教科書、先生から何となく知識を得ているとこうなる。
今後もこのような明らかに間違った出版物は、誰かが気付くたびに指摘していくしかないのだが、今回のこの絵本に関しては文部科学省が所管する協会の推奨図書だけに、20年間も放置し続けた責任は重い。国の将来を担う子供の教育は大事だ。
出版物の与える影響は大きい。今後、誤った表記の出版物が出回る事のないよう関係者には十分注意してもらいたい。
文筆:木下裕二