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北方領土が泣いている  東郷 秀憲

平成22年7月11日

 ロシアは、先日、我が国固有の領土である択捉島で大規模な軍事演習をし、対日戦勝記念日(実際の名称は第二次世界大戦終結記念日)を制定した。それなのに、本件を一面トップで取り上げたのは産経新聞だけ。その他のメディアは新聞、テレビを問わず完全に無視している。
 テレビを見ていると、大相撲不祥事の報道ばかり。韓国の芸能人が亡くなった事よりも、終戦時のどさくさで不当に侵略され占領されたままの固有の領土が危険な状態になろうとしている事に注目すべきだ。
 これが、他の主権国家ならばどうか。確実に選挙の争点になっているだろう。そして、例えば韓国ならば、竹島で同様の事を日本がロシアがごとく起こしたら国民世論が燃えて、その圧力に屈して日本政府は妥協するところだ。ところが、参議院選挙真っただ中なのに、いずれの政党も候補者も、ロシアの暴挙について叫ばないし、世論も興味を示さない。一体、この国は主権国家なのか。
 占領されたままの領土を取り戻す基本戦略は、ロシア世論が北方領土を日本に返した方が得策だと思わせることである。例えば、ロシア人の大半が住んでいるモスクワの市民からすると日本と戦争するというリスクを冒してまで不当に占領した遠く離れた小さな島を維持しようとは考えないだろう。となれば、我々国民が大きな声を出して反ロシア運動を展開する。それを、ロシア国民に知らしめる。我々日本人は、ロシアと付き合いたいがロシアが我々の領土を占領している限り、付き合いをやめると言う主張をし続ける。G8でも問題提起するべきだ。一番のチャンスは洞爺湖サミット(北海道)の際に、首脳会談の席で北方領土問題を突然、動議がごとく首相に語ってもらうことだった。もちろん、ロシアに進出したトヨタなどの企業にすれば、大いに困るだろう。経済活動を考えたら、そう単純ではないが、したたかにやってもらいたい。日本人が北方領土問題に関心を持てば持つほど領土返還が近づくことだけは間違いない。
 私は、兼ねてより中学の修学旅行で必ず行ってもらいたい場所が二か所ある。一つは靖国神社(遊就館を含む)。そして、もう一か所は、根室の納沙布岬。ここからは、北方領土がすぐそばに見えるからだ。軍歌、そして知床慕情の歌詞の意味を知らずして日本人とはいえない。
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【主張】択捉島で露軍演習 G8と思えぬ蛮行許すな
2010.7.8 03:25
このニュースのトピックス:領土問題

ロシア軍が日本固有の領土である北方四島の択捉島で軍事演習を行った。日本側は「わが国の北方四島に関する法的立場から、受け入れられない」と演習を実施しないよう求めていたが、それを無視して強行した。

自由と民主主義という価値を共有するG8(主要8カ国)メンバーにあってはならぬ蛮行といえる。

ロシア側発表によると、今回の演習は北方四島最大の択捉島演習場で兵士約1500人、軍用特殊車両計200両を投入し、「非合法勢力を包囲して殲滅(せんめつ)する」との目的で実施した。6月下旬から8日までロシア極東からシベリアで行われた大規模軍事演習「ボストーク(「東方」の意)2010」の一環で、ソ連崩壊後の北方領土では最大規模だという。

マカロフ露軍参謀総長は「具体的な敵国を想定していない」という。しかしロシアは今年2月、軍事ドクトリンを改定し、「ロシアと、その同盟国への領土要求」を主な軍事的脅威として掲げ、北方領土返還を求める日本を強く牽制(けんせい)していた。今回の演習は「仮想敵」とする日本に軍事力を誇示し、北方領土の主権を譲らないとの強硬姿勢を示したのだろう。

昨年の防衛白書は、日本周辺でのロシア軍の活動を「活発化」と分析しており、北方の脅威をみせつけている。

第二次大戦での勝利を国民団結のための国家的な重要行事とするロシアでは、対ナチス・ドイツ戦勝記念日の5月9日に加え、日本が降伏文書に署名した9月2日を「第二の戦勝記念日」として法制化しようという動きがある。

今年は、第二次大戦終結から65年という節目の年である。北方領土での演習を、この第二の戦勝記念日の法制化への布石と考えているふしもある。ロシアによる北方領土の不法占拠を合法化する試みであり、由々しき事態だ。

岡田克也外相は軍事演習について「極めて遺憾だ」と述べ、外交ルートを通じてロシア側に抗議した。日本政府は今後、駐露日本大使の召還なども念頭に置き、ロシアには強い姿勢で臨まなければ、同じことが繰り返されよう。

米国のマケイン上院議員(共和党)は以前からロシアをG8から排除せよと主張してきた。強硬な姿勢を示すロシアに対しては、米国や価値観を共有できるほかの国と連携をとりながら国際的な圧力をかけていくべきである。

文筆:東郷秀憲(東郷秀憲の国益コラム