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ノーベル賞受賞の報を聞いて  沖田 東一

平成22年10月7日

 ノーベル化学、根岸米大教授と鈴木北大名誉教授

 スウェーデン王立科学アカデミーは6日、2010年のノーベル化学賞を、米デラウェア大のリチャード・ヘック名誉教授(79)、米パデュー大の根岸英一・特別教授(75)、北海道大の鈴木章・名誉教授(80)の3人に贈ると発表した。
 授賞理由は「有機合成におけるパラジウム触媒を用いたクロスカップリング」。日本人の化学賞受賞は08年、米ボストン大の下村脩・名誉教授以来2年ぶり。2000年以降では計6人となり、日本の化学研究の水準の高さを世界に見せつけた。賞金1000万スウェーデン・クローナ(約1億2000万円)は3人で等分される。授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれる。
 今回の受賞で日本人のノーベル賞受賞者は全体で計18人となった。
(10月6日読売)
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コメント:
 昨日の探査機はやぶさの地球外物質発見の報に続き、明るいニュースだ。今回の受賞で、日本人の自然科学系の受賞者は15人。日本は経済力は低迷しているが、科学技術の分野においては、未だ世界トップクラスの国であることが証明された。
 しかし、この分野でも最近は中国韓国の実力が迫ってきており、安心してはいられない。両国とも人材育成に国家規模で力を入れており、技術研究の設備環境も整えられている。日本は研究者に対する国の助成も少なく、多くの研究者は資金不足の中で研究を続けている。また日本では実験を行うにも行政の手続きが多く、それも研究の妨げとなっている。面倒な手続きを嫌って海外で研究を行う人もいるほどだ。このままでは近い将来に中国韓国に技術面でも追い抜かれ、ノーベル賞は中韓が独占しているような状況もありうるだろう。
 日本がトップであり続けるためには、研究者が不自由なく仕事に没頭できる環境(教育・設備・行政)を、国家規模で行わなくてはならない。無論、多額の予算が必要になるだろうが、技術立国日本として生きていくには必要な投資である。

文筆:沖田東一