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生活保護制度の見直しを  沖田 東一

平成22年7月15日

 生活保護支給額が労働賃金を上回る現象が12都道府県で発生しているらしい。いったい何のために働いているのか、という気にさせられる。生活保護は労働が出来ず最低限の生活すら営めない人への救済措置のはずだが、その制度を悪用して不当に生活保護を申請する人があとを立たない。働かなくても賃金以上の収入を得られるのだから当然だろう。役所の受給審査も杜撰で、以前に、中国人48人が来日直後に大阪市に生活保護を申請し、30名以上がそのまま受理された事件があった。資格のない外国人でも簡単に審査が通るなら、日本人なら一層容易だろう(※)。受給後の審査も緩く、受給者が別で収入を得ていても、行政は指導するだけで支給はそのまま続くケースも多い。
 こんな状況であるから、生活保護の受給者数は年々増加しており、財政を圧迫している。大阪市は市民の5%が生活保護を申請し、税収の47%にあたる2863億円が生活保護費に使われている始末だ。大阪市は財政難になっているそうだが当たり前だ。このまま生活保護費が上がれば、近い将来、日本全体が大阪市のようになってしまう。早急な制度見直しが必要だ。
 まずは受給額の見直し。不況で民間企業の給与が下がっているのに、生活保護費がそのままなのがおかしい。大阪市の最低時給は703円。1日8時間勤務で月22日間働いたとすると、給与は月12万3728円となり、これに所得税をひいた約10万円が手取りとなる。これが生活保護費(生活扶助・教育扶助・住宅扶助)の上限だろう。生活保護受給者は、税金のほか、公共運賃、医療費などが免除されているので、その分も含めると、受給額は8万円前後が妥当である。医療扶助・出産扶助は残すが生業扶助は廃止する。また受給資格を見直し、同和枠の撤廃、永住外国人以外への生活保護支給は原則禁止、そのほか兄弟や家族に資産や一定以上の収入がある場合等、他の救済手段がある人への受給も認めるべきではない。車や家を所有している場合も同様である。
 仮に上記のやり方を大阪市で実行した場合、受給者は13万6000人から1万人以上減少し、受給額も2863億円から半額以下にまで減額できる。受給者の生活は非常に厳しくなるだろうが、それでいい。生活保護に示された最低限度の生活とは、そういうものだ。

(※)外国人が生活保護を受給するには、日本での一定期間の滞在が条件になっているので、この例の中国人は対象外のはずである。それでもやりようによっては受理されたのであるから、そうした条件の無い日本人のほうが、一層申請しやすくなる。。

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働けど生活保護に及ばぬ最低賃金…12都道府県
 2010年度の地域別最低賃金を労使代表が議論する「中央最低賃金審議会」の小委員会が14日開かれ、席上、厚生労働省が、最低賃金で働くより生活保護を受けた方が高収入となる「逆転現象」が起きている地域が12都道府県に上ったとする調査結果を公表した。
 厚労省によると、各都道府県が決めている最低時給が、その地域で1か月に支給される生活保護費を一定の方法で換算した時給より低かった自治体は、北海道、青森、宮城、秋田、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、広島の12都道府県。このうち、差額が最も大きかったのは神奈川県の47円だった。
 最低賃金法は、逆転現象の解消を目標にしており、昨年度は45都道府県で最低賃金が引き上げられ、生活保護の時給換算額を下回ったのは10都道府県に縮小していた。現行の最低賃金は全国平均が時給713円だが、この日の小委員会で経営側は「景気が先行き不透明。大幅引き上げは困難」との見方を示した。
(2010年7月14日20時08分 読売新聞)

文筆:沖田東一