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参院選の雑感  沖田 東一

平成22年7月12日

雑感@:政界再編―「自民・公明・みんな」の3野党連合なるか

 参院選が終わった。開票結果は、おおかたの予想通り、民主党が落ち込み、自民党とみんなの党が票を伸ばす結果となった。
 今後の政局を予想すると、自民党・公明党・みんなの党が野党連合を組み、民主党・国民新党の与党連合と対立する図式になるだろう。こうすれば参議院で114議席となり民主党(106議席)以上の勢力を獲得でき、衆議院で法案が通過しても参議院で阻止することが出来る。当然そうはさせまいと、民主党も公明・みんなの党を抱き込もうと動いているが、この両党が民主党と連立を組む可能性は低い。公明党はここ10年自民党と連立を組んでおり、今回の選挙でも部分的に協力していた。特に今回の大勝で自民党の政権復権の可能性が高まった今、自民党と手を切ることは考えられない。みんなの党は政権を狙っているが、民主党と手を組んでも存在感をしめすことはできない。自民党は現在スター性のある政治家があまりいないので、自民党と組んだ方が主導権を発揮できると判断するに違いない。ただ本当に自公と連立を組むと、マニフェストとの矛盾を追及される恐れがあるので、表向きは部分協力という形になるだろう。
 何にせよ民主党が大敗したことで、政局は大きく変動する。今後の与野党の動きに注目である。

雑感A:外国人参政権法案はどうなる?

 今回の選挙によって、参議院の党派比率が大きく変わった。
 一覧にすると、以下の通りである。
民主党 :116→106(賛成)
国民新党:006→003(反対)
自民党 :071→084(反対)
公明党 :021→019(部分的賛成)
みんな :001→011(反対)
共産党 :007→006(賛成)
社民党 :005→004(賛成)
新党改革:006→002(反対)
たち日本:003→003(反対)
幸福実現:001→001(反対)
日本創新党、女性党は獲得議席なし

 外国人参政権への賛否で分けると、以下の数値になる。
賛成 :128→116
反対 :088→104
部分的賛成:021→019

 微妙な数値だが、 実際は民主党内にも反対派がいるため、もう少し反対派よりになるだろう。今のまま外国人参政権法案が衆議院を通過しても、参議院で差し止められるのはほぼ間違いない。
 ただし、参議院で差し止められても衆議院で再可決すれば法案は成立するので、まだ脅威がぬぐわれたわけではない。また、外国人参政権法案を、在日朝鮮人に限定して提出されれば、公明党が賛成にまわって成立する可能性もある。まだ注意は必要である。

雑感B:保守派は一つにまとまれ!

 今回の選挙では新しい政党がいくつか誕生したが、結果は振るわなかった。「たちあがれ日本」と「新党改革」はそれぞれ比例区1議席、日本創新党にいたっては獲得議席0という結末である。
 知名度の低さやイメージ戦略の失敗など、敗因は色々考えられるが、根本理由は保守勢力が分裂したことにある。
 悲しいことだが、国体について真面目に考えている国民は、そう多くない。その少ないパイを支持層とするのなら、複数党派に分かれて票を奪い合っている場合ではなかった。参院選での理想的な戦い方は、日本創新党・たちあがれ日本・新党改革の3党が一の党にまとまって、裏で幸福実現党による投票協力を得ることだった。こうすれば単純計算で比例区でもう1議席を獲得できていた。広報活動ももっと出来たであろうし、さわやかなイメージの中田宏を党首として全面に打ち出せば、さらに票の積み増しができたかもしれない(平沼氏は尊敬しているが、テレビ報道を見る限り、彼の年齢と声では無党派から票が集まらない)。
 日本は昔から保守勢力の動きがバラバラである。些細な違いで分裂して、左翼勢力に撃破されている。教科書採択運動の際も、ブルーリボン運動でも、内部分裂を起こして活動規模を縮小してきた。対して左翼勢力は目的を示せば、詳しい内容も知らなくても運動に協力する。個人としては馬鹿であるが、集団としての力は巨大である。
 次の衆院選では、保守勢力ももう少し柔軟にならなければならない。そうしなければ、今回のような失敗を再び繰り返すだけだろう。

雑感C:自民党は国民の信用を取り戻したか

 今回の選挙で自民党は数を10議席以上増やした。数字だけ見れば、自民党は国民からの信頼を取り戻したといえるかもしれない。
 しかし、自民党の当選議員を選挙区と比例区に分けると、選挙区の大勝に比べ、比例区は12議席と過去最低の数値である。このことから考えると、選挙区投票では民主に勝たせたくないから自民候補へ入れたものの、比例区でも続けて自民を支持することに抵抗を感じる人が多かったことが伺える。また、前回の衆院選で民主党が大勝したことの弊害の大きさが、一方の政党を支持することにためらいを生じたこともあるだろう。こうした躊躇い票が、みんなの党へ流れていき、今回の大躍進に繋がった。
 以上のことから言えるのは、国民は自民党を民主党への抵抗勢力とは認めても、その中身については信用しないということである。そして自民党の監査役として、みんなの党に大きな期待をかけていることが分かる。議員数は自民党が多くても、国民からの信頼度は、みんな>自民 だ。
 このことを踏まえたうえで、自民党が信頼を取り戻すためにすべきことは、みんなの党のアジェンダを受け入れ、ともに公務員改革路線を進むことだ。それをやって初めて、国民も自民党が変わったと納得するだろう。谷垣総裁の決断に期待する。

文筆:沖田東一