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マスコミに派遣切りや下請けイジメを叩く資格無し 沖田 東一

平成21年3月9日

 昨年末より、大企業による派遣切りや下請け会社イジメが盛んにニュースで取り上げられている。新聞やテレビは連日この問題を取り上げ、派遣社員や下請け会社の側に立って大企業を糾弾する姿勢をとっている。
しかし、マスコミが企業を批判する姿勢には偽善を感じる。マスコミ業界にも派遣切りや下請けいじめは深く存在しているからだ。

 朝日新聞を例に挙げると、子会社に「朝日新聞総合サービス」という派遣会社がある(※)が、ここから派遣された社員は、正社員よりはるかに低賃金で同じ労働をさせられている。契約期間が過ぎれば雇用は切られ、たとえ朝日新聞グループ内への派遣であっても正社員への登用・紹介は行わない。朝日新聞は自分の子会社であるこの派遣会社のやり方について、一度でも批判したことがあるだろうか?
 また、グループ全体ではここ数年で大量の派遣切りが行われ、4000人以上いた派遣社員を、現在約1800人まで切り捨てている。(正社員の数は増えていないので、正規雇用の可能性は限りなく低い)
 朝日新聞は、社説で他の企業の批判をするならば、まずは自社の派遣切りを見直すのが先だろう。

 その他に、新聞業界全体の問題として「押し紙」という制度がある。押し紙とは、新聞社が、個人経営などの新聞販売店に対し、ノルマとして実際の購読者数以上の新聞を「押しつけている」とされる問題である。(独占禁止法違反となるので新聞社側は認めていない)。押し紙は新聞全体の発行部数の3〜4割を占めていると言われており(資料)、その分は販売店の負担になる。販売店は契約上、押し紙を押し付けられても、本や雑誌のように返品ができない。事業主の新聞社には逆らえないため、泣く泣く押し紙を引き取らされているのが現状だ。こうした新聞社のやり方は、販売店に対する優越的地位の乱用行為であり、大企業による下請けイジメと全く同じ構図ではないか。

 テレビ業界も同様だ。
 テレビ番組の制作は、まずテレビ局が制作会社に発注し、発注を受けた大手の制作会社は製作費を中抜きして下請けの制作会社に発注を出し、その下請けは更に孫請けに発注を、という形で作られる。当然、下請け、孫請けになるほど収入はひどく(※2)、かといって断れば二度と仕事が来なくなるので、引き受けざるを得ないという状況である。
 そのうえ最近のCM収入の不振で、テレビ局は製作費を削っており、下請け会社へのしわ寄せはさらに悪化。一方的に単価引き下げを通告され、倒産した制作会社も多いという。こうして作られた番組で下請けイジメを批判しているのだから、笑えない話である。
 今年2月に、こうした下請けイジメを是正する取り決めが総務省との間でなされたが、自主ルールのうえ罰則無しでは、どのくらい守られるのか微妙だ。

 マスコミは「我々は弱者の味方」と正義顔で企業批判を行っているが、自分達も立場の弱い下請けには圧迫をかけ、派遣は当然のように切っている。
 まずマスコミのすべきことは、自分の襟を正すことだ。それ無しの批判など、ただの戯言でしかない。

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テレビ界、下請けいじめ是正へ 番組買いたたき禁止など
http://www.asahi.com/showbiz/tv_radio/TKY200902210


 テレビ業界が、番組作りを発注する制作会社への「下請けいじめ」をなくそうと、総務省と自主ルールをまとめた。契約書もかわさずに発注し、金額を一方的に下げることが珍しくない現状を改める狙いだ。制作会社の著作権も尊重する。NHKと地上波テレビ放送を手がける120社余りの全民放を対象に、3月中に実施する。 (略)
 番組「買いたたき」は、テレビCM収入が落ち込み始めた一昨年後半から目立つという。総務省の調査では「一方的に単価引き下げを通告された」「値下げ圧力が強く、赤字で受注した」などの訴えが制作会社から寄せられた。「安い単価に変える時は番組内容やキャストも見直す」「番組種類ごとの単価表を放送局と制作会社が話し合って決める」ことを推奨する。
 制作会社が番組内容を放送局に提案し、制作に責任を持つ場合は、制作会社に著作権があると判断される。ただ、この場合も放送局が著作権を握る例が少なくない。放送局が著作権譲渡を迫ることを「不当な経済上の利益の提供要請」として禁止する。
2/21朝日より
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※人材派遣会社は朝日新聞のほか、読売新聞、日経新聞、TBS、フジテレビ、日本テレビなど、多くのマスコミ企業が子会社化している。
※2:例えば捏造で有名になった「あるある大辞典」の場合、スポンサーの花王の出資(1億円)→電通による管理費:1500万円→放送事業者の「電波料」:4800万円→関西テレビの「電波料」:500万円→日本テレワークの経費:2340万円→最終的な孫請け制作会社に渡る制作費……860万円
と、9割が中抜きされてしまっている。
その他、個々の事例が、このサイトに挙げられているので、参考にされたし。

引用:新聞の20%以上は配達されない 「押し紙」という新聞社の「暗部」
   :テレビ業界の残酷物語

文筆:沖田東一