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上坂冬子先生と北方領土  東郷 秀憲

平成21年4月18日

 実に悲しいことである。尊敬していた作家の上坂冬子さんが今日亡くなられた。上坂冬子さんは、山崎豊子さんと並び大好きな作家である。私の場合、数ある先生の著作の中で、最も影響を受けたのが『「北方領土」上陸記』(文藝春秋、平成15年)であった。また、北方領土に関して動きがあった際に新聞社に送りつける寄稿文には愛国者としての真髄がうかがえた。この問題にずっと目を光らせていたことがうかがえる。いつだったか本籍を北方領土の国後島に移しておられた。先生亡きあと、我々がその意志を継がなければならないという決意を新たにした。
 時には、先生の主張に驚きをもった事もあった。特に、河野洋平(当時は宮沢内閣の官房長官)の所謂、従軍慰安婦談話については失望したものだが、それでも尊敬する気持ちに揺るぎはなかった。
 今夜は、『「北方領土」上陸記』(文藝春秋、平成15年)を読み返したい。読者の皆様にもお薦めしたい書である。


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 上坂冬子さん死去、78歳=ノンフィクション作家、保守派の論客

 ノンフィクション作家で社会評論家の上坂冬子(かみさか・ふゆこ、本名丹羽ヨシコ=にわ・よしこ)さんが14日午前9時50分、肝不全のため入院中の病院で死去した。78歳だった。東京都出身。葬儀は近親者のみで済ませた。
 1949年、トヨタ自動車工業に入社。社内の出来事をつづった「職場の群像」で評論家としてデビュー。62年から執筆活動に専念し、戦争犯罪や従軍慰安婦など戦後史を扱ったノンフィクションで知られる。主な作品に「生体解剖−九州大学医学部事件」「慶州ナザレ園−忘れられた日本人妻たち」「男装の麗人・川島芳子伝」など。93年に菊池寛賞、正論大賞。保守派の論客としても活躍した。

文筆:東郷秀憲(東郷秀憲の国益コラム