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台湾総統選挙応援報告(台湾) 沖田 東一

平成16年4月2日

 全世界の注目する、今回の台湾総統選挙。この視察および応援のために、我々国益研究会のメンバーは、選挙前日の3月19日から選挙翌日の21日まで、2泊3日の日程で台湾を訪れた。
 今回の台湾選挙は、台湾が中国から独立するか否かをかけた、非常に大きな意味を持つ選挙である。
 台湾独立の歴史は、終戦直後まで遡る。終戦後、それまで台湾を統治していた日本が去った後、蒋介石率いる中国国民党が台湾へ進出、台湾人に重税を課して圧政を行い、政府に反対する台湾人を次々と拉致・殺害、その数は2万人以上にのぼった。(詳しくはネットで「228事件」「白色テロ」で検索すると多くのサイトが出てくるので、そちらを参照されたし)
 李登輝前総統がそんな台湾を民主化させ、民進党に政権を移行させたものの、国民党および中国は虎視眈々と復活の機会を窺っており、中国もその支援をする。現に中国は台湾を自国の領土とみなし「独立するなら武力行使も厭わない」と、台湾に向けて約500基のミサイルを装備している。
 そんな状況下の総統選挙は、台湾人に「中国と手を組むかどうか?」「中国の支配を受けるか否か?」という踏み絵とも言えるだろう。
 もちろん、私達日本にとっても他人ごとではない。台湾が中国になると日本の輸送ルートは中国に握られることにになるのだ。国益上非常にマイナスである。そうならないために、今回の選挙で民進党の手助け(野次馬?)をすべく、我々は台湾へと向かったわけである。

 さて19日、台湾到着早々、驚くべき事態が発生。何と陳水扁総統が遊説中に狙撃されたらしいのだ。
 ホテルのテレビで続報を見る限り、総統の命は無事だったようだが、この事件で現地は混乱してしまい、当初参加予定だった応援イベントも中止になってしまった。何もしないのも勿体ないので、ホテルを出て台北の街を見学。投票前日だけあって夜中だというのに静まる様子がなく、緑の旗を立てた車やバイクが走っている。(緑は民進党支持の意味)。歩いていると道行く人が声をかけてくる。「Yes! Taiwan!」(台湾独立支持の意味)などと声を掛け合う。自分がどちらの政党を支持するか、どんな考えを持っているかを積極的に話しあっている。台湾人の選挙への意識の高さに感心した。

 そして投票日当日、我々は日本から来たということをアピールするため、日章旗2本と日の丸の旗、日の丸鉢巻、応援プラカードを持参して会場へと向かった。(当初は恥ずかしかったが、道行く人から声をかけられると、少し誇らしくなった。)
 開票会場は超混雑で、一体どれほどの人が集まっているのか、想像もつかない。会場の真ん中にはステージが設置されており、正面の電光掲示板で開票状況が表示だれていた。ものすごい歓声と盛り上がりだ。見渡す限り、緑の旗の波、波、波が続いている。我々が騒ぎの輪の中に入ると、皆が一斉に反応した。「日本人だ!」「ありがとう!」すれ違う全員から声をかけられる。日本から応援にきた私達を、目を輝かせながら大歓迎してくれた。あちこちで写真を撮られ、マスコミまで取材にやってきた。ちょっとしたスター気分。
 そうこうしてると、突然紙吹雪が舞い、陳総統が再選したことが分かった(得票が僅か3万票差だったことは後から知った)。
 台湾人が中国をはねのけ、自国独立を支持した瞬間だった。
 周囲の熱狂は最高潮。我々も一緒に感激しながら街を歩く。歩くところに人だかりができ、握手を求められ写真を撮られる。こんなに注目されたのは初めてだ。日本では政治的な活動は周囲から白い目で見られがちだが、台湾ではそうではない。政治面での民度は台湾の方が明らかに上だと感じた。


総統再選を台湾人とともに祝う

 翌日、テレビをつけると、敗退した国民党のデモの映像が目に飛び込んできた。どうやら総統府の前で、抗議集会を行っている様子。ホテルからすぐ近くだったので、様子を見に総統府へ向かう。正面はバリケードで封鎖、有刺鉄線が張り巡らされおり、周囲から歓声が聞こえている。参加者は殺気立っており物々しい様子である。私は民進党の応援グッズを持って来ていたので、危うく囲まれそうになってしまった。しかし投票前に「投票結果に異論はない」と力強く語っていたにもかかわらず、いざ敗退すると抗議集会を行うのは、いかにも中国人の思考である。

 昼の便で台湾を離れる。機内の新聞で、得票数の差は約3万票。無効票数が約30万票もあったことを知る。国民党は「無効票が多いのは民進党の陰謀だ」として、開票のやり直しを要求しているらしい。しかし無効票の原因は、国民党の要望で審査が厳しくなったためであり、無効票の多くは民進党支持の台湾老人のものである。よって開票しなおしても陳総統の勝利は揺るがないだろう。
 台湾は自らの意思で自分のアイデンティティを掴み取ったのだ。偉大な台湾の将来に幸あれ。

文・写真:沖田東一