平成15年3月13日
正論大賞の受賞講演を拝聴したのは、久しぶりである。石原慎太郎氏が受賞して以来になる。中西氏の講演は、有意義であった。
講演の要点は、国連の限界と現在の秩序の崩壊ととらえた。中西氏の反戦運動で成功したものは歴史上ないという指摘は的を得ている。60年安保闘争にしても、ベトナム反戦運動にしてもソ連のKGBが西側世論を動かしていたに過ぎない。現在、日米安保が日本の国益に果たした役割を指摘するものはマイノリティである。しかしながら、あの時代国会を囲んだ大衆やそれを扇動したマスコミはそのことを反省していない。今回のイラク問題でも同じことを繰り返している。結局、無責任なのである。
国連には、旧敵国条項がある。その敵国条項では、敵は日本、ドイツ、イタリアを指す。かつて、第二次世界大戦で枢軸側であった敗戦国であり、常任理事国は、戦勝国である。現在、フランスが拒否権を発動することをちらつかせているが、その拒否権は常任理事国しか有していない。日本の周りには、仮想敵国たる中国、ロシアが存在し、彼らは拒否権を有した常任理事国なのである。日本のマスコミは、国連に淡い期待をよせているようであるが、仮に中国やロシアが日本や台湾と戦争になったら国連は効力を発揮しない。北朝鮮に制裁措置をとろうとしても、常任理事国たる中国やロシアなど親北朝鮮国家が拒否権を発動する可能性は高い。それなのに、日本の国連負担金は世界190カ国中堂々の第二位。一時は第一位でもあった。常任理事国入りをめざしているが、旧敵国条項も撤廃できないのだから笑い話に思える。これでは、金だけむしりとられているカモ国家である。人口も少なく負担金をほとんど払っていない小国であるギニアやカメルーンが非常任理事国で、彼らの決定がイラク問題のキャスティングボートを握っているのだから、そろそろ国連への幻想を捨てるべきではないだろうか?
国益コラムでも指摘しているが、イラク問題では、断固アメリカ支持でいくべきである。国際世論や国連外交など当てにならないもので、この国を守ることは出来ない。国連決議を経たら支持するという世論があるが、過去に国連決議を経た戦争は、湾岸戦争だけである。イラク問題は、日本の場合は即北朝鮮問題であることを忘れてはならない。
次に、中西氏の指摘で興味深かったのはEUという大勢の枠組みのもろさが露呈したこと。統一通貨ユーロの将来性にも疑問があるということである。さらには、韓国の新政権はアメリカよりも北朝鮮や中国、ロシアを選択しているという指摘である。即ち、冷戦後新秩序の崩壊を意味する。
これらの動きに対して、日本が早急にとるべく方策として、@有事法制の制定A集団的自衛権行使が可能とする政府の憲法解釈の変更Bミサイル防衛システムの構築Cスパイ防止法の制定をあげられた。全く同感であり、これまで私達が指摘してきた議論に通じる。世論喚起に努めなければならない。
文:東郷秀憲